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じん肺・アスベスト被害根絶のために

2023年 なくせじん肺全国キャラバン

1.なくせじん肺全国キャラバン
  毎年10月に取り組まれている「なくせじん肺全国キャラバン」、 今回で34回目を迎えました。このじん肺キャラバンは、1990年10月 に第一回が取り組まれました。当時闘われていた長崎北松じん肺訴訟において、 前年3月、福岡高裁で不当な判決が出されました。闘いをすすめていく上で、 じん肺被害の実態を世の中の人々に知ってもらおうという目的で、長崎から東京 に向けてキャラバンカーを走らせたのが「なくせじん肺全国キャラバン」のはじ まりです。道中で宣伝行動や労働組合等へのオルグ活動を東京まで行い、日比谷 公会堂で、「国鉄・じん肺・水俣争議団勝利全国決起集会」が開催されました。
 そして、翌年、翌々年も取り組まれ、四国や北海道などでも実施されるよう になり、1998年の第9回のキャラバンでは、全国7ブロック、全国各地の都道府 県庁や労働局をはじめとした行政への要請、加害企業への抗議行動なども取り組まれるようになりました。
2.じん肺キャラバン神奈川行動
 10月2日には、じん肺キャラバン横須賀実行委員会と神奈川県建設労連等で じん肺キャラバン神奈川行動を取り組みました。神奈川行動は、神奈川県への要請は 行えず神奈川労働局への要請だけになりましたが、午後2時から、横浜第二合同庁舎の 1階の共用第4会議室で行なわれました。
 要請書は、全国キャラバン実行委員会のものと、じん肺キャラバン横須賀実行 委員会の2種類。全国キャラバン実行委の要請は、健康管理手帳の交付、インフルエン ザ等の予防接種、携帯用アスベスト・アナライザー、等9項目。横須賀実行委の要請は、 ネブライザー機器を労災保険の対象とすること、石綿肺がんの認定基準の改正、じん肺 管理区分の申請でのCT問題、等7項目。
 重点課題として「携帯用アスベスト・アナライザーを積極的に使用するよう」 要請しました。担当者は「現在、厚労省より1台配備されているが、県内の労働基準監 督署から使用したいとの申し出があまりない。」とのこと。「建物の解体現場の立ち入り 調査でアナライザーを使えば、アスベストの有無がその場でわかり、もし違法工事が行われ ていれば中止させ被害を防ぐことができるので、監督署がもっと積極的に、頻繁に使うよう に指導して欲しい。」と要請しました。
3.じん肺キャラバン東京集結行動
 今年は、10月2日(月)から開始され、23日(月)12時に三菱重工業本社前(丸の内) に集結、その後、衆議院第一議員会館大会議室で東京集結集会が開催されました。
 三菱本社前では、「三菱長船じん肺・アスベスト」第3陣・第4陣の原告団・弁護団の 訴えの他、支援の仲間等のあいさつがありました。14時から開催された東京集結集会は、 主催者あいさつ、基調報告の後に、「トンネルじん肺救済法成立に向けて」「建設アスベストの 和解解決と給付金改正に向けて」の提起があり、その後各ブロックからのキャラバン行動の報告、 原告団等から決意表明があり、17時に終了しました。また、24日には国会請願行動、 23日、 24日両日にわたり厚労省等への省庁交渉が取り組まれました。
(安元)

2022年 なくせじん肺全国キャラバン
 -キャラバン神奈川行動・東京集結行動-

 第33回目となるじん肺キャラバンは、 10月に全国8ブロックでの諸行動が取り組まれ25日に東京に集結、 そして、10月3日~5日には、アスベスト被害全国一斉電話相談会が行われました。
1.キャラバン神奈川行動
 2022年10月7日に、神奈川県建設労連等じん肺キャラバン横須賀実行委が じん肺キャラバン神奈川行動に取り組みました。この行動は10時から神奈川労働局への 要請行動として取り組まれました。
 神奈川労働局へは重点課題として昨年に引き続き「携帯用アスベストアナライザー (材料分析装置)を積極的に使用するよう」要請しました。ちなみに、労働基準監督署への アナライザーの貸し出しは、今年度はこれまでに2件ということでした。
2.じん肺キャラバン東京集結行動
 東京集結行動は2022年10月25日、26日に取り組まれました。25日は、 12時より、厚生労働省前に集結し、各団体のアピールやあいさつがありました。そして、 14時40分から衆議院第一議員会館大会議室で、「建物改修解体問題シンポジウム」が 行われました。
 シンポジウムは、4人の方から以下のテーマで報告がありました。①「解体工事現場 の事前調査と状況」は東京土建の革靴敏彦さんから、②「アスベスト規制をめぐる最近の国際動向」 は石綿対策全国連の古谷杉郎さん、「石綿関連法規改正と今後の課題」はアスベストセンター所長 の名取雄司さん、④アスベスト対策の自治体条例補助制度」は石綿問題を追及しているジャーナリ ストの井部正之さん、それぞれの立場から重要な問題提起でした。
 26日には、午前10時から、じん肺弁連の会議室でズームを利用した厚生労働省への 要請が行われました。要請は、昨年に続き「インフルエンザ予防接種、肺炎球菌ワクチンの投与 について労災保険の給付対象とすること」、「一人親方にも健康管理手帳を交付すること」、 そして、新たに「間質性肺炎の問題」について等の要請が行われました。
 また、26日は日比谷公園の霞門に集合し、12時から国会請願デモが取り組まれました。
(安元)
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2022年7月 長野県アスベスト対策センター
        松本市で相談会を開設

  ★建築物の解体工事や屋根をふく作業に従事した人から相談★
 相談会は10時から16時まで開設しました。相談は面談で4件、電話で4件(事前相談含む) あり、5件が建設業に携わる方からの相談でした。「屋根をふく作業をして、アスベストを含む建材を 切断した」「内装業でアスベストが含有している壁ボードを張る作業をした」「昔、左官業をやっていて、 壁塗り材にアスベストを混合する作業をした」「亡くなった父は鉄骨組みをしていて、アスベストの吹付 作業もやったと言っていた」など、とりわけ建設業で働く人からの健康被害の相談が多くを占めました。
 現在、アスベスト材の吹き付けや、アスベストを含む建材の製造は禁止されていますが、 1960年代からの高度経済成長期にはビルの建築現場でのアスベストの吹き付けや、壁や天井に 使用されるボードにアスベストが混合されていました。そのような建築物がこれから2020年代の 後半にかけて、解体のピーク期に入ります。
 アスベストの健康被害は、過去に終わった問題ではなく、これからの問題だと改めて実感した 相談会でした。
長野県平和・人権・環境労働組合会議より 一部抜粋
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2021年 なくせじん肺全国キャラバン
 -キャラバン神奈川行動・東京集結行動-

 第32回目となるじん肺キャラバンは、10月に全国8ブロックでの諸行動が取り組まれま28日に東京に集結、 そして、10月4日~6日には、アスベスト被害全国一斉電話相談会が行われました。
1 キャラバン神奈川行動(10月8日)
 2021年10月8日、神奈川県建設労連等とじん肺キャラバン横須賀実行委がじん肺キャラバン神奈川行動に組りくみ ました。この行動は13時30分から神奈川労働局への要請行動として取り組まれました。
 神奈川労働局へは重点課題として「携帯用アスベスト・アナライザーを積極的に使用するよう」要請しました。局の 担当者は「昨年度は、使用実績は0だった。今後各署が積極的に使用するよう、研修会を行いたい」とのことでした。
2 じん肺キャラバン東京集結行動(10月28・29日)
 2021年10月28日、29日に東京集結行動が取り組まれました。28日は、12時15分より、厚生労働省前に 集結し、各団体のアピールやあいさつがありました。そして、14時からは国会近くの星陵会館で「2021年なくせじん肺 全国キャラバン集結集会」が行われました。
 集会は主催者あいさつ、基調報告の後、立命館大学教授の森裕之先生の記念講演「建設アスベスト訴訟から石綿健康被害 補償基金制度へ」が行われました。
 講演は、建設アスベスト訴訟最高裁判決の意義として、一定数の建材メーカによる共同不法行為による賠償責任、一人親方 に対しても賠償を認めた、しかし、課題として、屋外作業従事者の除外という問題がある、としました。そして、新しい給付金制 度については、建材メーカーの関わり方が不明で、建材メーカー間の原因者負担に基づく「建設アスベスト補償基金」への財源 拠出のあり方が課題だ、としました。
 集会は、その後原告の訴え(ビデオ上映)、全国8ブロックの行動の報告、行動提起・閉会あいさつで、16時30分に 終了しました。
 28日には、午前10時から、じん肺弁連の会議室でズームを利用した厚生労働省への要請が行われました。要請は、 「インフルエンザ予防接種、肺炎球菌ワクチンの投与について労災保険の給付対象とすること」、「一人親方にも健康管理手帳を 交付すること」等について要請が行われました。
(安元)

2020年度 横須賀労働基準監督署交渉

 去る八月四日、県下一斉監督署交渉(神奈川労災職業病センターなどで取り組む)が行われ、 横須賀労働基準監督署交渉に事務局池田が参加しました。新型コロナ感染拡大予防のために、 横須賀署は人数制限があったため、会の参加は見送りました。
 労働安全衛生、労災補償、その他の労働条件など昨年度の統計表などをもとに横須賀の監督署の動向の報告を聞きました。特にアスベスト関係の報告をいたします。
 労働安全衛生の関係では二〇一九年度の石綿除去工事届出件数がビルが一五件、アパート・マンションが一件、 学校・幼稚園が一二件、工場が二件、その他が一二件で合計四二件でした。
担当者によると、自治体とは情報共有をし、対応しているということで、学校などについては、学期休みの時に 除去工事をしているとのことでした。田戸台にあった旧横浜地裁横須賀支部もアスベストがあり、除去作業をしているので、 質問すると、横須賀署が担当しているとのことでした。立ち入り調査などはしているのかという問いにはできる限り行っている とのことでした。これは私たちが長年じん肺キャラバン行動などで、横須賀市に対しても要請をしていることもあり、積極的に 自治体と情報を共有できるようになったと思われます。
 労災課の方からは職業性疾病認定状況の報告があり、肺がんが請求二件、業務上認定四件、中皮腫は請求三件、業務上認定三件、繰り越し一件、石綿肺は請求0件、認定も繰り越しも0件でした。 いづれも業務外、取り下げや回送もありませんでした。他の署と比べて資料もかなり整っていたそうです。 今後も労働者のために真摯に取り組んでいただきたいとおもいます。
 県下一斉監督署交渉は一通り終了し、八月二〇日に神奈川労働局交渉をする予定です。
 
(ヨコスカじん肺被災者の会『根絶』より転載)

2019年 なくせじん肺全国キャラバン
 -キャラバン神奈川行動・横須賀行動実施-

 第30回目となるじん肺キャラバンは、 10月に全国8ブロックでの諸行動が取り組まれました。 10月9日には横須賀行動、神奈川行動が行われました。
   
1 キャラバン神奈川行動・横須賀行動(10月9日)
 10月9日(水)午前11時から神奈川県、午後1時30分から神奈川労働局への要請行動としてじん肺キャラバン神奈川行動が行われました。
 神奈川県への要請は、「アスベスト対策を講じるために、ハザードマップを作成すること」を要請し、 県からは「調査し台帳を整備している」との回答でしたが、地震等がおきた時には台帳では役に立たないので、ハザードマップの作成を再度要請しました
 神奈川労働局へは「携帯用アスベスト・アナライザーを導入すること」を要請し、労働局は「最近、厚労省より配備され、現在使用できるように勉強している」と回答。横須賀実行委として「ネブライザーの機器の労災支給」等については、前向きに受け止め本省へ意見具申するとの事でした。
   
 なくせじん肺全国キャラバン横須賀行動は、10月9日午後4時から横須賀市への要請、6時30分から横須賀集会という形で取り組まれました。
 横須賀市への要請は、じん肺キャラバン横須賀実行委が「アスベスト健康被害の予防と対策の徹底についての要請書」 を提出し、横須賀市と交渉が行われました。
 横須賀市へは、「アスベスト健康被害の予防と対策の徹底についての要請」を行い、昨年施行された、アスベスト飛散防止の問題を含んだ「横須賀市建築物の解体等工事に伴う紛争の未然防止に関する条例」の周知徹底、アスベスト飛散事故が起こらないための万全の体制をつくること等を要請しました。
 なくせじん肺全国キャラバン横須賀集会は、ヴェルクよこすかの会議室で18時30分から約30人の参加者で行われました。この集会は、「解体工事に伴うアスベスト問題とは」と題してアスベストセンターの永倉さんの講演、建設アスベスト神奈川訴訟の原告のあいさつ、支援労組の報告等がありました。
   
2 じん肺キャラバン東京行動(10月23日・24日)
 10月23日正午、全国各地から厚労省前へ集結、集結行動を行い、午後2時から衆議院議員会館大会議室で集結集会、 24日の午前中は厚労省交渉、被告企業等への要請行動、正午から、国会請願デモが行われました。
 厚労省交渉では、「じん肺患者にインフルエンザ予防接種するとき労災保険の対象とすること」を要請しましたが、担当者は支給対象とならないと拒否しました。 
(なくせじん肺全国キャラバン横須賀実行委員会)

'18.10.11 じん肺キャラバン横須賀行動

 10月11日(木)に、なくせじん肺全国キャラバン横須賀行動が、14時30分から横須賀市への要請、18時30分から横須賀集会という形で取り組まれました。
 市への要請には横須賀実行委の構成団体である、じん肺・アスベスト被災者基金、横須賀じん肺被災者・アスベスト被災者の会、三浦半島地区労センター、神奈川労災職業病センター、神奈川県勤労者医療生協が出席、横須賀市は、横須賀保健所、環境政策部、都市部建築課、水道、教育委員会が出席しました。
横須賀市へは、「アスベスト健康被害の予防と対策の徹底についての要請」を行いました。
《要請項目は以下の5項目》
 1.「横須賀市建築物の解体等工事に伴う紛争の未然防止に関する条例」について
 2.環境省の委託を受けて行われる「石綿ばく露者の健康管理に係わる試行調査」を横須賀市でも行うこと
 3.アスベスト使用の市有施設の除去等の対策について
 4.アスベスト被害の防止について
 5.学校アスベスト問題について
 7月1日に施行された「横須賀市建築物の解体等工事に伴う紛争の未然防止に関する条例」は、アスベスト飛散防止に係わることも含まれたもので、この条例に基づき「石綿濃度測定運用マニュアル」も作成されるなど意義あるものになっています。そこで、この条例を周知徹底することなどを要請しました。
 「試行調査」は、以前は石綿製造工場等がある自治体に限られていたのが、現在は、申し出があれば環境省の委託で実施できるようになったので、横須賀市でも行ってほしいと要請しました。横須賀市が行っている胸部健診で精密検査(CT)になった場合自費で受けなければならないが、「試行調査」を行うとCT検査を無料で受けられることになり受診者にプラスになることなので実施する方向で検討してほしい、と要請しました。
 なくせじん肺全国キャラバン横須賀集会は、ヴェルクよこすかの会議室で18時30分から約30人の参加者で行われました。
 この集会は、『「横須賀市建築物の解体等工事に伴う紛争の未然防止に関する条例」の成立とこれから、及び、横須賀市「試行調査」への取り組み』と題した講演が、中皮腫・じん肺・アスベストセンター事務局長の永倉さんにより行われた他、三浦半島地区労センター等からの連帯挨拶、首都圏建設アスベスト神奈川訴訟の原告の挨拶、そして、この訴訟を支援している神奈川県建設労連から建設アスベスト訴訟の報告が行われました。
 講演では永倉さんから、じん肺キャラバン横須賀実行委が条例を制定するよう横須賀市に働きかけてきたこと、条例の策定にあたりパブリックコメントや担当部署との話し合いで実行委の意見も取り入れられたこと、そして、今後の条例の見直しの問題等について話をしていただきました。
(なくせじん肺全国キャラバン横須賀実行委員会)

2018年度 横須賀労働基準監督署交渉

 太陽がまぶしい7月11日、横須賀労働基準監督署の共用会議室にて交渉が行われました。これは(NPO)神奈川労災職業病センターが毎年夏に県下一斉監督署交渉を行っているもので、 横須賀署は特に被災者の会の会員が多く労災認定を受けている監督署でもあります。今回は鈴木副支部長、小山さん、事務局からは安元、池田で参加しました。
 事前にセンターから要請書を提出していましたので、労働安全衛生関係、労災補償、その他の労働条件など毎年監督署が取り扱った件数などを中心に監督署の担当部署それぞれから報告していただき、その他参加した労働組合や私たち被災者の会などから質問や意見などを交わしています。特にアスベスト関係を報告いたします。
 横須賀署におけるアスベスト関連疾患の労災認定状況については、肺がんは今年度(平成29年度)では請求が9件、業務上が3件、繰り越しが6件、中皮腫は請求が4件、業務上が6件、繰り越しが1件、石綿肺は請求0件、業務上3件、業務外1件でした。肺がんについては本省協議中(繰り越しの9件中)2件となっており、プレパラート(顕微鏡で見るためのガラス状の板。ここに染色した肺の細胞などを張り付ける)等を病院から取り寄せて、審査をした事案もあったという報告がありました。また、横須賀署内での肺がん案件は胸膜プラークがある方が多く、業務上認定が多いとの事です。年度末などに請求した事案があったため繰り越しが多いように見えますが・・・との話でした。
 石綿肺の業務外1件については、もともと健康管理手帳申請の予定が労災を申請してしまって・・・という事案だったようです。ここで石綿による健康管理手帳の問題、受診しても何も説明がないまま、つまり健診だけを行うのであり、ここを改善しないと今回のような事案が増えるのではないかと意見が出ましたが、健康管理手帳の運用については窓口が労働局健康課になるため、労働局交渉でも意見を述べることにしました。
 他に昨年度の石綿除去工事の件数として学校幼稚園が5件、工場が20件、病院社会福祉施設が3件、などが報告され、まだまだアスベストは身近にのこっていることがわかりました。
 他に、長年の要求項目である、じん肺長期療養者の傷病年金移行について要請もしましたが、個別事案として明確な回答はありませんでした。
 長年参加していますが、やはり継続は力なりです。少しずつ前進していきたいと思います。
(ヨコスカじん肺被災者の会『根絶』より転載)

【 肺がん・中皮腫・アスベスト(石綿) ホットライン -電話相談-】

 アスベストは建築材料に使用されてきたことや、あらゆる産業にまたがって使用されてきたことから、 今後もアスベスト被災者が増え続けることが予想されます。 当救済基金では、例年、じん肺・アスベスト被害ホットラインを開催して、 アスベスト被害やじん肺などの健康不安を感じている方々の相談を受けています。

2023年 肺がん・中皮腫・アスベスト(石綿)ホットラインを開設します!

'23.8.26(土)
〜 8.27(日)
午前10時
~午後5時
0120-349-931

2019年 肺がん・中皮腫・アスベスト(石綿)ホットラインを開設しました!

'19.8.2(金)
〜 8.3(土)
午前10時
~午後5時
0120-349-931
'19年度 ホットラインは終了しました。
*ホットライン終了後も、引き続き相談を受けます。
 ☎ 0120-349-931(無料) 
 

2018年 肺がん・中皮腫・アスベスト(石綿)ホットライン実施 合計110件の相談

 2018年8月28日〜29日横須賀じん肺・アスベスト被災者救済基金会議室において「肺ガン・アスベストホットライン」を開設しました。
 今年も新聞紙1社に「意見広告」として掲載しました。また地域を応援するということで、今年は兵庫にあります「NPO法人アスベスト被害者救済基金」と共催で行いました。 横須賀は19件の相談、兵庫は91件の相談が寄せられました。
 今回の横須賀の相談の内訳としては中皮腫5件、肺がん0件、石綿肺関係7件ほどでした。山梨や、山口県から相談が寄せられたり、関係機関に相談を回した事例もあります。また健康管理手帳を取得した後の相談も3件ありました。
 今回の相談では松本にあるNPOユニオンサポートセンターからスタッフ2名が研修に来てくださり、相談対応も充実したものとなりました。横須賀の相談後、11月下旬に松本でも相談会を開き、対応をしていただいています。
 来年も引き続き開設予定です。
(池田)

【 被 災 者 支 援 活 動 】

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旧国鉄・JR裁判 【4/11情宣活動 大井工場門前】

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《工場門前でビラまき》
 4月11日夕方、かつて原告の黒沼さんが働いていた旧大井工場、現在のJR東京総合車両センターの門前にて「黒沼裁判を支援する会」主催で門前ビラをまきました。3月12日の勝利判決後、判決内容を広く工場労働者に知ってもらうべく、街宣行動を行いました。 工場出身のOBや国労東京地本青年部からも参加があり、11名で対応。 用意していたビラも300枚ほど配布でき、工場労働者のアスベスト対策における問題意識が高いこともわかりました。

 しかしながら現在の若手の工場労働者はアスベストというものが工場にまだ残っている(建物など)など知らないことが多いので、危険性を どう周知させるかが課題となっています。
 黒沼裁判は被告が3月22日付で控訴し、高裁でも闘いは続きます。 引き続きのご支援よろしくお願いいたします。
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旧国鉄・JR裁判 【3/12東京地裁でついに勝利判決勝ち取る!】

 
【JR・国鉄の責任を明確に認定、1770万円支払いを命じる!】
 3月12日(火)冷たい雨が激しく降る中、東京地裁ロビーには13時過ぎから多数の支援者が集合しました。
《支援者ら40名が結集》
 14時の判決は、傍聴制限が掛けられ、整理券による入廷で法廷外で待機する支援者も出ました。
 注目の判決を言い渡した民事26部の大竹裁判長は「被告(旧国鉄・JR東日本)らは連帯して、原告2名に各885万5千円と 令和3年1月24日から支払日まで年3%の遅延金を支払え」等と述べました。 また、主文を読み上げた後で「事件の重大さを鑑み判決理由を述べる」と異例の判断理由の概要を述べました。
【肺がん死亡は石綿ばく露が原因】
 争点であった①Kさんの肺がん原因及び死亡原因では、「昭和33年4月頃から平成8年4月頃までの間、外板修繕作業や、 石綿板の使用で日常的に石綿粉じんにばく露していた」とし、「そのことで石綿肺や肺がんを発症し、加えて新型コロナウイルス感染が 影響して死亡した」として石綿ばく露で肺がんを発症し、令和3年1月24日に死亡したと認定。争点の②共同不法行為の有無については、 粉じんの発生・飛散防止措置は不十分で安全配慮義務違反、防塵マスク着用も徹底せず、また、危険性の教育もなされておらずいずれも 安全義務違反と認定。
【JRと国鉄は一体のもの 】
 共同不法行為の判断は、JR東日本は、国鉄の承継法人として国鉄の車両や設備を承継し、国鉄と同様の鉄道事業を引き続き行い、 同事業を行うにあたり必要な鉄道車両の修繕を本件工場で行っていたのだから、昭和62年4月1日前後において何ら変わりがないのであり、 両被告の安全配慮義務違反は社会通念上一個の行為と見ることができ、各安全配慮義務違反は共同の不法行為に該当する。と明確に判断しました。  争点③の損害額は、被告両者の共同の不法行為がなければ、少なくとも一定の期間の延命が可能であったし、その他の事情を考慮すると、 原告の精神的苦痛を慰藉する慰謝料として2300万円が相当であるが、長期にわたる喫煙歴が死亡リスクを高めたとも評価できるので、 損害の公平な分担から、慰謝料の3割を減ずることが相当であり、慰謝料は1610万円が相当である。弁護士費用は161万円を認める。と するものでした。 判決後、法廷控室で、入廷がかなわなかった支援者らに弁護団が判決概要を報告、 原告からお礼が述べられました。
《厚労省で記者会見》
 判決を受けて、原告と弁護団らは厚労省において記者会見を行いました。
 福田弁護士から以下判決の持つ意義について説明を行い①鉄道会社の使用者としての責任を認めた点として、鉄道車両や、鉄道車両の 補修等に当たって用いられる資材の中には、アスベストを含むものが多数あったのに、十分な粉じんの発生?飛散防止対策や、適切な呼吸具の 着用の徹底や、粉じん等の危険性に対する安全教育を行っていなかった使用者は、安全配慮義務違反を免れないことが、本件訴訟でも明らかに された。 また、鉄道車両の石綿吹付け、101型、103型、201型等の鉄鋼車両の外板の内側への石綿含有アンダーシールの使用、床キーストンプレートへの アンダーシールの塗 布が認められたほか、溶断や溶接にあたっての石綿板の使用があったことを裁判所は認定した上、旧国鉄及びJR東日本が 粉じん対策、呼吸具着用の徹底、粉じん等の危険性に対する 安全教育を怠ったことを認めている。鉄道会社におけるアスベスト被災者は相当数 いることが見込まれるが、判決で責任を認めた例は、これまでなかった。他の企業と区別して鉄道会社が責任を負わないとする理由はないが、 当然の責任を認めた点は意義がある。 ②JR東日本の責任を認めた点としての意義、本件訴訟においても、JR東日本は、旧国鉄とJR東日本は同時存在していないなどという 理由で JR東日本の責任を否定してきた。しかし判決は、JR東日本にも長期間(10年以上)勤務していた被災者について、同社と旧国鉄の責任を、 「社会通念上 一個の行為」であったとして、共同不法行為として認め た。JR東日本が、旧国鉄の設備・事業等を引き継ぐことを前提として設立され、現に 旧国鉄の設備・事業等を引き継いでおり、承継に当たって特段の調査の上での石綿対策等を行っておらず石綿粉じんにばく露させている以上、 共同不法行為者として責任を負うことを明らかにして、これを認めた初めての判決である。
 判決を受けて望むことは、アスベスト被害を受けた被災者の疾病が判明するのは、多くは退職後である。そうした場合、JR東日本をはじめ とした多くの会社では、退職者のアスベスト被害に対応する補償を用意していない。退職日の前に発症するか、後に発症するかのみで補償の 有無の結果が大きく違うことは公平とはいいがたい。 本件判決を機として、JR東日本をはじめとした鉄道会社には、改めて退職した労働者への石綿健康管理手帳の取得や労災制度等、石綿補償制度の 周知及び、退職した被災者に対する補償制度の創設といった取り組みを行うことを期待したい。
 と判決の評価と意義を語りました。
《マスコミも大きく報道》
 会見には原告、弁護団、国労本部、じん肺アスベスト被災者救済金が同席し、マスコミ3社が取材をし、原告のKさんが「父の思いが裁 判所に伝わり良かった。結果を墓前に報告したい」等と感想を語りました。
 会見後の同日夜と翌日朝刊で、報道各社は「石綿- JRに賠償命令」(赤旗)「石綿で肺がん、男性死亡 JR東日本に慰謝料支払い命令 対策不十分」(朝日)と判決内容と会見の模様を 一斉に報道しました。
《報道交通ビルで 報告集会》
 記者会見後の18時30分から、新橋交通ビル地下ホールで判決報告集会が開かれました。午後の判決から集会まで多数の 国労組合員・OB・支援者40名あまりが参加しました。
 国労東京支部の伊東さんの司会で始まり、弁護団からは「一貫して責任はないと主張してきた被告らの主張が退けられ、安全配慮義務違反が 認められ、JRと国鉄の共同不法行為を認めたもので大きな意義がある」等と代理人福田・山岡両弁護士から判決内容の報告と意義が語られました。 「これまでの支援に感謝します。原告の思いが裁判所に伝わったと思う。JRが退職労働者への公正な補償をしてほしい」と原告Kさんから改め て支援者らにお礼と感想が述べられました。国労本部の木村副委員長は、「国労としてもこの問題を大切に位置づけ旧国鉄などとも交渉を行って きた。判決を受けて退職者も公正な補償がかなよう交渉を求めたいし、引き続き支援したい」と挨拶がありました。
【闘いは次のステージへ】
 3年8カ月と長期の闘いでしたが、勝利判決を勝取りました。 JRと国鉄は不服として控訴をすると思われます。しかし、判決の重み はいささかも揺るぎないものです。控訴審になろうとも、引き続き被 害者への公正な補償を求めて皆様と一緒に声を上げ続けていきます。 JR東日本にはこの判決を厳粛に受け止めて被害者に真摯に向き合うこ とを要求したいと思います。
第22号旧国鉄・JR大井工場アスベスト裁判ニュースより転載
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旧国鉄・JR裁判 【来年3.12判決の指定、勝利判決を勝取ろう!】

 
【旧国鉄・JR大井工場アスベスト裁判とは】
 本件は、原告故Kさん(2021年1月逝去:享年80歳)が、長年国鉄・JR 大井工場でガス・電気溶接工として石綿に 露しての作業を続け、退職後の2017年に肺がんを発症、2019年4月に業務による肺がんとして東京品川労基署より労災認定を受けました。
 裁判の提起は、2020年7月、肺がん発症は、安全配慮義務違反によるものとして旧国鉄とJR東日本を相手に損害賠償を求め東京地裁に 申し立てたものです。
《15回の弁論と和解協議で 最後まで不誠実》
 裁判は、2020年9月に原告本人が陳述に立った第1回口頭弁論、2021年1月には原告Kさんがコロナ感染により急逝し、二人のご子息 が裁判を承継して進行、2023年5月の第14回弁論では原告・被告双方の4人の証人尋問が行われました。これまで2023年9月12日まで15回の口頭 弁論が開かれ、弁論は終結しましたが、裁判所の意向で10月25日と11月17日に和解協議が行われました。和解協議では、裁判所からの意見を 踏まえても双方の和解による解決は結果として「不調」に終わり判決が言い渡されることになりました。
 和解協議は、裁判所から被告JRが一定の責任の下で、退職者の補償制度の創設や、和解可能な個人補償をするよう求めたものでしたが、 JRが最後までこれに否定的な対応を取り続けたために判決となったものです。
《判決は2024年3月12日(火)14時~東京地裁415法廷にて》
 和解協議の不調を受け、裁判所より判決日の通知があり、判決は2024年3月12日(火)14時から地裁415法廷にて言い渡されることとなり ました。
 この裁判では、原告Kさんが旧国鉄やJRのガス・電気溶接の作業者として40年に及ぶ作業の中で、舞い上がる石和粉じんや、防熱や 火災防止のために石綿を養生材として手掴みで取り扱いをするなど劣悪な作業環境でマスク着用の指導も危険性の教育もされずに長年石綿ばく露 を受けたことを、具体的な証拠の提出と陳述書や証言をもとに立証してきました。
 被告JRと国鉄はこれに対し、「肺がんになったのは喫煙が原因」「死亡原因はコロナ感染」「原告の肺にあった石綿小体数は2700本余り であり、認定基準に満たない」「労災認定した国が誤っている」「必要な安全対策は実施、石綿除去対策も行っていた」「職場に石綿粉じんは発 生していない」等と主張、原告からの求釈明には何ら回答も開示もせずに、自らの責任は存在しないので訴えは棄却せよと裁判で繰り返し不誠実 な態度を取り続けてきました。
【勝利判決をめざして】
 3年余の裁判闘争は、毎回20~30名を超す裁判傍聴支援、広範な団体や個人による支援する会の結成、国労本部をはじめ各機関への要請行動 、20号にのぼるニュースの発行、学習会や報告集会の開催、JR大井工場門前の宣伝行動なども取り組んで来ました。
 私たちは、当然ながら被告旧国鉄とJR東日本に厳しい判決が下されると確信するものですが、判決が被害者への公正な補償と、今後の被害 救済につながるものであることを切に願うばかりです。
 また、どのような判決になろうとも、国鉄労働組合にはこれを契機に被害者の救済に向けてJR各社との交渉を強化し、退職者と現役 労働者 の安全と補償制度の確立に向けて奮闘を強く期待したいと思います。
 3年と8カ月の闘いを経ていよいよ判決を迎えますが、公正な判決を求める署名や要請・宣伝行動なども準備し勝利のためにさらなる取り組み を準備しなければなりません。引き続き皆様には、ご支援をお願いするものです。
第21号旧国鉄・JR大井工場アスベスト裁判ニュースより転載

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’23.9 旧国鉄・JR裁判 【第15口頭弁論(最終)】

 
《第15回口頭弁論(最終)開かれる》
 9月12日(火)旧国鉄・JR大井工場アスベスト裁判の口頭弁論が行われました。 10時30分の開廷前から東京地裁ロビーにOB・支援者らが支援に駆け付け、21名が傍聴しました。
 定刻に始まった裁判は、裁判長による原告及び被告が提出した最終準備書面等の確認が行われ、 原告及び被告代理人による意見陳述が行われました。
 原告代理人福田弁護士は、業務による石綿ばく露について述べ、原告Kさんが現車鉄工で 1958年から39年間もの長い間、車体外板や床板等に使用されていた吹付石綿やアンダーシールなどを切断や研磨、 溶接する環境でその粉じんを多量に吸引していたこと、さらに電線等を保護するために石綿板を直接用いて養生等に 使用していたことを紹介しました。
 さらに、日常的に行われていた「気吹き」作業で、多量の粉じんが舞い上がり、多くの労働者がこれを吸入していたこと、 気吹きは無くなったとか、作業時は事前に周知していたとする被告の主張が誤りであること、車体検修場や改造場には換気設備が なかったり、極めて不十分なものであったこと、そしてマスクの配布も着用指導も長年怠っていたことを述べ、これらの業務実態から、 長期間にわたり石綿粉じんを吸入し続け肺がんを発症したことが明らかであると陳述を行いました。
 続いて陳述に立った原告代理人山岡弁護士は、被告旧国鉄とJRの責任論について述べ、石綿の危険性については 1940年代から指摘され、1955年には発がん性があることが広く知られていたことを紹介し、原告が入社した1957年頃には石綿の発がん性、 危険性を認識することができたのであり、1988年まで予見可能性がなかったとする被告の主張を批判しました。
 また、肺がん発症と石綿粉じんばく露の因果関係について、相対リスクが2倍であれば足りるとし、Kさんが長期間石綿ばく露の業務に 従事しており、肺がん発症のリスクが2倍に増えるとする労災認定基準を優に満たしていること、被告が主張する原告の喫煙による肺がん発症 について、石綿と喫煙は相乗的にリスクを高めるものであり、喫煙によるリスクが生じていても石綿粉じんばく露の影響が排除されるべきもの ではないこと、このことは労災認定基準でも喫煙歴が認定除外の理由とはなっていないこと等と述べました。以上のことから原告の肺がんは、 被告らの安全配慮義務違反による過失と因果関係があるとしました。さらに、被告旧国鉄とJR東日本が否定する共同不法行為について、 車両や施設等の承継、事業の連続性から客観的共同関連性があり、改めて共同不法行為者でありその責任を負うものであると述べました。
《被告の言い分「肺がんは喫煙が原因、死因はコロナ、石綿粉じん作業はなく、安全対策も行っていたので訴えられる理由はない」》
 続いて陳述した被告代理人渡辺弁護士は、そもそもKさんが肺がんになったのは50年を超す喫煙によるものであり、肺がん発症 リスクを2倍以上に高める基準である乾燥肺重量1gあたり石綿小体数が5,000から15,000本であるところ、原告K氏の肺中の石綿小体数 は2,709本であったのだから原告が主張する相対リスク2倍の根拠はないとしました。
 また、Kさんの死因は、新型コロナウイルスによるものであり、57年間も、一日20本もの喫煙をしていたことが関与したものであり、 業務起因性がないことは明らかである。また、鉄道車両の修繕作業は、石綿粉じんが発生するような作業ではなく、粉じん対策は実施しており、 原告の主張は誤りである等と述べ、さらに、旧国鉄とJRの共同不法行為責任もないので請求は速やかに棄却されるべきであると陳述しました。
 被告の主張は、これまでの主張の繰り返しであり、提出した証拠や陳述書、尋問で明らかになった事実をことごとく否定し、被害者への 反省も、責任も明らかにしない極めて不当な対応です。
《弁論は終結に》
 双方の陳述を終えて、裁判長は、「これをもって弁論を終結する」「追って判決日を決定します」と述べ、閉廷後に14階の民事26部にて 双方から意見聴取を行うことを告げて裁判は終了しました。
 閉廷後控室で行われた傍聴者報告会では、国労東京地方本部、神奈川OB会、東京OB親睦会、全国一般東京地本、国労大宮工場OB代表ら から連帯・支援のご挨拶があり参加者は「勝利判決まで支援を強化しよう」と意思統一を行いました。
【次回「和解協議」は10月25日(水)11時から】
《判決か、和解か》
 裁判終了後、地裁民事26部で、裁判官と原告・被告双方の個別協議が行われました。裁判官からは、「和解の可能性について 検討できないか」と双方に問われました。判断材料となる具体的水準は示されませんでしたが、補償制度の新設・充実等が和解解決の 項目にあるようで、被告側はこれには応じることは難しく、個人補償の検討は可能であるとの立場を表明したようです。
 いずれにしても、次回協議を10月25日とし、それまで双方が検討をすることとしました。これは、原告と被告、代理人による非公開 協議となります。
 仮に、和解となった場合、退職者への補償制度が今後位置付けられ、被害者への補償が公正に行われるのであれば、3年余の法廷闘争は 被害者救済に大きな前進となることは間違いありません。また、和解とならず判決となっても、原告が押し込んでおり、これまでの闘いで大きな 成果を勝取れる可能性が開けたと言えると思います。被告旧国鉄とJR東日本は、被害者の救済、被害者に寄り添う真摯な対応を取るよう改めて 要求します。
 
第20号旧国鉄・JR大井工場アスベスト裁判ニュースより転載

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’23. 5 旧国鉄・JR裁判 【証人尋問】

 
《5/17原告・被告4名の証人尋問終わる。》
被告証人は苦しい弁明繰り返しい弁明繰り返す
 5月17日(水)旧国鉄・JR大井工場アスベスト裁判の第14回弁論(本人及び証人尋問)が東京地裁415法廷で行われました。支援者や 国労関係者など34名が集まり、10時30分の開廷に30名が傍聴に参加しました。
《石綿を手づかみで作業》
 最初に証言に立ったのは原告側証人A氏(元大井工場鉄工職場同僚)で、原告代理人の山岡弁護士からKさんやAさんらが 行っていた鉄工職場の作業実態について質問があり、Aさんはその詳細を証言しました。K氏と一緒に作業していたこと、アスベストを 使用して手づかみで養生をしていたこと、気吹きの際や、ガスや溶接、サンダー作業など車両の外板を修繕する際に埃や粉じんが舞い上げって いたこと、作業者によってまちまちだった当時のマスク使用状況や着用を巡る会社の指導状況、石綿の危険性の指導などなかったこと等職場の 実態を具体的に証言しました。これに対し、被告代理人弁護士からは、証人の工場転勤前の仕事内容、201形車両に鉄工の作業がなかったこと、 石綿封じ込め作業が行われているのを知っているかと質問、これに古賀さんは、201形でも鉄板の貼付け工事があったことや、石綿封じ込め作業 は記憶にないと答えました。さらに被告代理人は、201形が増えて仕事量は減っていたと主張し、これには人も減らされており、仕事量は変わら なかった等と証言しました。この後、裁判官からも大戸の構造や、201形の腐食状態、石綿は誰が片付けていたのか等の質問が証人に行われました。
《工場で20名も被害者がいる》
 次に証言をしたB氏(同元第2電車職場)は、原告代理人福田弁護士からの質問で、証人の経歴とK氏との関係、大井工場の職場 の位置図などを示し、車体修繕場や改造場の説明を行いました。次に、電車に使用されていた石綿の実態について、写真や厚労省の文書を示し その確認が行われました。また、大井工場所属の115形電車と同じ車体構造の415形の車両の説明書(国鉄設計事務所作成)を示し、厚さ15ミリ の吹付石綿が使用されていたことを証言、他にも近郊形や急行、特急形で使用されていた可能性について述べました。
 また、大井工場で主流であった103形電車をはじめ殆どの車両で石綿含有のアンダーシールが車体外板や幕板、戸袋、床板等に使用され ていたこと、ブレーキ部品の制輪子や台車心皿ブッシュなどにも石綿が使用されていて、これらが粉塵化し車体下部に付着していた可能性に言及 しました。さらに、床下の機器箱内に石綿が多用されており、これらの手入れ時にアスベストが飛散していた可能性を述べました。また、車体修 繕場の気吹き作業について、PCA棟が完成したS60年以降も日に数度も気吹きが行われて、その際に石綿を含む粉じんが舞い上がっていた実態を 証言しました。さらに、車修場には換気扇はなく、大戸があったが開閉、換気のためのルールはなく、気吹き作業の事前周知などされていなかっ たと述べました。マスクの使用実態について、証拠として提出した国労大井工場支部機関誌「汗闘」の写真を示し、当時鉄工職場ではかなりの 作業者がマスクを着用していないことを指摘しました。また、Kさんが1958年から39年間も大井工場の現車鉄工という職場で、石綿を直接扱い、 粉じんが舞う環境で作業しており特に他の職場より劣悪な環境であったと述べました。最後に、自身も検査で石綿プラークがあると診断され、 健康不安があること、大井工場で肺がんや中皮腫の災害認定者が20名も出ており、会社が被害者や家族に寄り添って真摯な対応をすることを求め ました。昼食休憩を挟んで開かれた午後の法廷で、B証人の反対尋問が行われました。被告代理人は、車修場に送風機があったことを指摘し、 壊れて使用されていなかったと述べたことに、なぜ修理するよう要求しなかったのか、ガス溶接器の火口交換の作業時間は5分以内と短時間で あったことを知らないのか、電車が何キロで走行しどこでブレーキをかけるか分かるか等と質問、これに対し、火口の交換は1分や2分でできる ものではないこと、人により時間差も回数も違いがあること、電車のブレーキ使用速度は運転士ではなく分からないこと、低速でもブレーキは 掛けるし、車両を入場させる際にもブレーキは最後に必ず使用すると答えました。
 次に証言に立ったⅭ氏(原告K氏次男)は、主尋問で、少年時代に大井工場の家族運動会で車両を多数見たことや父親の仕事 についての記憶について述べ、父が住んでいた地域には石綿関連の職場はなく、環境によるばく露は考えられないと述べました。退職後は健康 だったが脳梗塞を発症し検査で肺がんが発見され、その手術の際に家族として医師から説明を受けたこと、手術後に石綿による労災認定となって から、裁判を起こし、責任を明らかにし同じ環境や苦しみを持つ人の役に立つかもしれないと父親から聞かされ、自身も提訴の時に一緒に裁判所 に来たことなどを証言しました。また、コロナに罹患し、医師から重症以上であり、帰れないかもしれないと告げられたことや、亡くなる直前の 様子や最後の会話など遺族の心情を具体的に証言しました。最後に、故人の志を遺族として引き継ぎ裁判に臨んでいること、劣悪な環境で作業を 行い、病気になり亡くなった無念さ口惜しさを語り、JRが安全な職場になることを願っていると述べました。
 最後の証人、被告側のⅮ氏(元大井工場鉄工職場)は、車修場は、作業者が大戸を開けていたので換気されていたし、気吹きの際は 退避していた。鉄工職場のプラズマ小委員会からマスク着用の指導がされていた。石綿は、水につけて使用しており飛散しない。養生に使った 石綿は、鉄工班は除去していない。石綿使用のガス溶接器火口交換はごくまれで、時間も短時間だから問題ないと聞いている。気吹きは人払いさ れていたし、換気はされているので大量の粉じんや石綿は飛散していない等と述べました。
 原告代理人の反対尋問では、石綿が電車に使用されていた事を知っていたか質問、これには認識はしていたと答えました。大戸開閉の ルールはあったのかの質問に、ルールはないがいつも開けていたと強弁、気吹きの回数の確認、気吹き時間は決まっていると陳述しているが 本当かと質問、言葉に詰まり時間は決まっていないこと、回数ももっと多かったことを認め、認識不足と答えました。ここでも裁判官から証人 に車修場の定置数や各班の修繕両数、作業時間等について質問がありました。
《次回9/12で裁判は集結、判決へ》
 今回の証人尋問は、各証人に対して、各裁判官から異例の質問が何度も行われ、裁判所の事件への問題意識がかなり高く詳細に検討・ 注視している姿勢が感じられました。
 証人尋問をおわり、裁判長から、「裁判を終結したいが双方の考え方はいかがか、また、話し合いによる解決も可能かと」問いかけが ありました。原告側は、次回の裁判までに追加の書証を提出したいこと、最終準備書面を提出しその陳述を行いたいことを要望しました。また、 「話し合いによる解決もその内容によるが否定するものではない」と述べました。裁判長は、追加書証は6月中に提出することとし、双方が最終 準備書面に相当の準備が必要なことも踏まえ、次回の弁論は9月12日(火)10時30分より行い、「閉廷後に、判決によるのか、話し合いによる 解決が可能か双方の意向を聞く」ことを告げ16時30分に閉廷しました。
《報告集会に40名 国労本部や退職者》
 裁判終了後、18時から新橋交通ビルの地下ホールで国労東京地本と同東京支部主催による裁判報告集会が開催されました。東京支部の 伊東執行委員の司会で始まり、東京地本の佐藤副委員長から主催者挨拶、来賓として国労本部の木村副委員長が「国労も鉄道運輸機構とアスベ ストで交渉してきたし、JRの中で唯一労働組合として石綿対策を重視してきた。勝利するまで支援したい」と激励の挨拶がありました。
 原告代理人の福田弁護士と山岡弁護士から裁判の経過とその意義について報告があり、「この裁判は、特にこの問題に頑ななJR東日本 に対して責任を問うものであり、現職及び退職者や関連労働者に与える影響が極めて大きい、労働組合としてもしっかり位置づけ支援をお願いし たい」と強調されました。
 続いて、裁判で証人に立ったB氏(元大井工場支部委員長)とA氏(元鉄工職場同僚)から裁判の傍聴参加のお礼と感想 報告があり、裁判支援する会会長の藤野さん、原告Kさんからお礼のあいさつがありました。 集会には約40名が参加し、国労東京支部の松田委員長が閉会の挨拶を述べて報告集会は終了しました。
《次回は結審/今回尋問でも明らか、原告が押し込む》
 裁判は次回双方の最終準備書面提出と陳述が行われ、結審する予定です。また、裁判所より話し合い解決の意向も確認が行われる模様 ですが、いよいよ年内或いは年度末までに判決が出される見込みです。これまでの書面や各種証拠提出、さらには今回の尋問を通じて、大井 工場の安全管理や、職場実態が明らかになるにつれ、裁判は原告に有利に展開していることは明らかです。気を緩めることなく勝利判決まで、 支援者や各団体のご協力をよろしくお願いします。
《5/10JR東京総合車両センター 早朝宣伝行動!!》
 裁判を目前に控えた5月10日(水)7時~8時20分にJR東京総合車両センター(旧大井工場)門前で大井工場アスベスト裁判の宣伝行動 を行いました。裁判を支援する会役員、国労組合員らでアスベスト裁判の進行状況、会社の不誠実な対応などを告発、さらには、社員やOBで20名 も中皮腫や肺がんの石綿災害の被害者・認定者がいることを知らせ、裁判が他人ごとではないことを訴えました。出勤前の社員や関連労働者たち はビラを受取り、声をかけて入場する社員もいました。1時間強で200枚を超すビラを配布しました。
第18号旧国鉄・JR大井工場アスベスト裁判ニュースより転載

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’23. 3 旧国鉄・JR裁判 【第13回口頭弁論】

 
《双方の書面主張ほぼ終了 いよいよ各証人の尋問へ》
第13回口頭弁論に20名が傍聴
 2023年3月14日11時より第13回口頭弁論が東京地裁415号法廷で開かれました。
 国労神奈川地区本部や国労大宮工場分会、国労OB や地域共闘の仲間など20名が裁判支援に集まり全員が傍聴に臨みました。
 開廷後、裁判長から、原告及び被告がそれぞれ提出した書面と、証人の申出について確認が行われ、原告側3名と被告側1名の 証人を採用し、5月17日に証人尋問を行うことを改めて双方に伝えられました。当日の尋問の進行や尋問時間など確認が行われ、原告 側証人は、①A氏(元大井工場鉄工職場の同僚:主尋問25分)②B氏(元大井工場第2電車職場:主尋問35分)③Ⅽ 氏(原告:訴訟承継人:主尋問20分)、一方、被告証人のⅮ氏(元大井工場鉄工職場同僚、現東京総合車両センター勤務:主尋 問40分)が、それぞれに主尋問と同様の時間で反対尋問を行うことに決定しました。
《次回5/17(水)10:30~16時(予定)》
 次回期日は、5月17日(水)10時30分開廷、午前は原告証人A氏の主尋問と反対尋問、証人B氏の主尋問までとし、昼休みを 挟んで、午後は証人B氏の反対尋問、原告本人のK氏の主尋問と反対尋問、続いて被告証人のⅮ氏の主尋問、同反対尋問の順で進行 し、終了は16時を過ぎる見込みとなり、丸一日の攻防となります。
《報告集会では》
 閉廷後、じん肺・アスベスト被災者救済基金の池田さんの進行で報告集会が始まり、原告代理人山岡弁護士より、裁判長より確認された 上記尋問の順番や時間等の進行について参加者に分かりやすく説明が行われました。続いて福田弁護士からは、原告側3名の証人の役割や証言の 主旨、今回遺族として裁判を承継し、陳述書を提出したK氏のその内容について「良くできており思いは裁判官にきっと響くものだ」と紹介 がありました。
 参加者から、国労神奈川地区本部や国労東京OB会、ノーモア水俣連絡会など連帯と支援の挨拶を受けました。原告Kさんから支援への お礼と決意が述べられました。裁判を支援する会事務局長の小池さんからは「次回裁判がまさに山場、5/17は法廷を埋めて、交通ビル地下ホール で報告集会を予定している」と報告があり、この後、午後から国労本部をはじめ各機関に支援継続の要請を行うことが報告されました。
《国労本部などに支援強化・継続を要請》
 裁判終了後の13時から、新橋交通ビルの国鉄労働組合本部と東日本本部に裁判を支援する会会員と原告Kさんら7名で要請行動を行い ました。支援する会藤野会長より対応した本部岩本書記長に要請書を手渡し、①5/17裁判と終了後の報告集会への支援②支援する会への継続的 支援③国鉄新聞等への裁判闘争の紹介などを訴えました。
 岩本書記長からは「アスベストの問題はJRでは国労だけが取り組んできた。今後も組織として取り組まなければならない課題、引き続 き関係機関と協力して対応したい」と発言があり、要請の締めくくりに会の小池事務局長より「現職は一定の補償制度があるが、裁判を通じて 会社の責任を明確化し、JR退職者の補償制度を労使で協議し、制度化を図ってほしい」と要請しました。続いて、同東日本本部の伊藤委員長 へも要請しました。
《5・17は法廷を埋めて、旧国鉄・JRを圧倒しよう!》
 被告JRらの主張は、相も変わらず「亡くなったのはコロナが原因」「肺がんは喫煙が原因」「安全対策は実施していたし、石綿粉じんは 発生していない」とし、しまいには、「労災の判断をした医員が誤っており、それを真に受けた労基署長の労災決定が間違っている」とまで 述べています。被告の証人陳述も新たな証拠の立証もなくこれまでの会社側主張を単に上書きするものでしかありません。
 Kさんが吸い込んだ石綿繊維はどこから来たと言うのでしょうか。大井工場ではKさん以外に、旧国鉄による「業務災害認定」を 受けた被災者はこれまで18名(肺がん8名、中皮腫10名)にものぼります。加えて労基署より「労災」と認定されたのは肺がんの故黒沼さんと Kさんの後輩Sさんが中皮腫で現在も闘病中なのです。これでも安全管理は適正で石綿ばく露はなかったと言えるのでしょうか。アスベスト 健康被害は過去の記憶ではありません。命を奪う「静かな時限爆弾」による被害は現在も広がり、埋もれた被害者がたくさんいるのです。
 証人尋問では、これまでの作業実態や杜撰な安全管理など「生」の証言で会社側の主張は崩れ去るでしょう。この裁判は、提訴から3年、 最終弁論を経て結審、年内判決という最終局面となります。
 国労組合員、JR退職者、支援者など勝利判決に向けてさらなる支援強化を呼びかけます。
第17号旧国鉄・JR大井工場アスベスト裁判ニュースより転載

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’23. 2 旧国鉄・JR裁判 【第12回口頭弁論】

 
《支援者ら23名が傍聴!原告準備書面(6)と3名の追加陳述書を提出、会社側陳述書に反論》
コロナが直接死因でも亡くなったのは石綿が原因と認定(労基署)
 2023年2月1日(水)旧国鉄・JR大井工場アスベスト裁判の第12回口頭弁論が東京地裁415法廷で行われました。 今回も支援者ら23名が傍聴行動に参加しました。 ・開廷後、裁判長らが原告が提出した甲35~42号の提出資料(Kさんの元同僚3名の陳述書)を確認。 原告代理人の山岡弁護士から今回提出の原告準備書面(6)の概要を説明しました。
   裁判長は、「そろそろ人証調べの日程を入れたい。次回は弁論としてその後は尋問としたい が如何か。」
 これに対し、被告代理人は、「原告準備書面(6)と甲号証陳述書を検討したのち反論す る。また、補充の陳述書も検討する。証人は検討したい。準備に一月半ほど頂きたい。」と発言。
 裁判長「次回は、陳述書の補充も含めて3月中旬に期日を入れ、次々回は尋問とする。」 「次回は3月14日(火)11時から、その際双方が証人申請をすること。」「次々回は5月17日(水) 一日を予定に証人尋問とする」と期日の指定をして閉廷しました。
 閉廷後の法廷控室での報告では、原告代理人の福田弁護士から「JR以前の職場状況を立証するため 元同僚のA、B両氏の 陳述書を提出した。あわせて被告提出陳述書への反論としてⅭ氏の陳述書も補充提出した。 PCA(パンタグラフ、クーラー着脱、車体気吹き場)ができてから気吹きはなくなったとする主張に、 稼働後も車修場で気吹きが日常的に行われていたこと、マスク着用状況など当時の職場実態を明らかにした。 次回は、 証人申請を行い、5月17日は証人尋問となり、その後に最終弁論、年内判決も見えてきた。」と報告。 山岡弁護士から「今回提出の原告準備書面(6)は、被告側は原告が亡くなったのはコロナと喫煙 が原因と主張しているが、労災医が石綿肺がんとコロナの共働原因説で労災死亡とし、労基署長が その決定をしていること等で反論した。術後の肺炎など禁煙後に肺機能の回復、リスクが低減する ことも証拠として提出した。」と報告しました。
 続いて傍聴行動に初めて参加した国労本部元書記の福原さんから「労働委員会や裁判闘争 で24年間事件に関わってきた。OBの知らせで裁判を知り参加した、今後も支援したい」元国労東京闘争団の 岡さんは「JR不採用事件で被告代理人だった向井弁護士を目前にして当時の自分に対する尋問を 思い出した」と感想を述べ、東京OB会藤野会長から「昨年末のOB忘年会でKさんと神奈川労 災職業病センター池田さんから裁判の報告を受けて引き続いて支援する確認をした」、国労東京地 方本部高瀬執行委員は「次回、次々回と尋問が近づき東京地本も組織的に応援したいと考えている」 と激励がありました。
 原告Kさんからは「沢山の参加にお礼を述べたい。OB会で報告させて頂き、皆さんと交流して 生前の父の活動、知らない部分を知る機会となった。引き続きご支援をお願いしたい」と述べられました。 裁判は提訴以来、2年7カ月になります。次回の弁論を経ていよいよ証人尋問と大きな山場に入りま す。
《次回 2023年3月14日(水)11時~ 》
 ※証人尋問は5/17と指定
 旧国鉄とJR側は、相も変わらず具体的な立証もせずに「肺がんは喫煙が原因、安全対策は行っていた」と 毎回同じ主張の繰り返しです。こちらが求めたアスベストを使用していた(撤去した)車両や時期も明らかにできていません。 被告は、次回に反論と陳述の補充もするとしていますが、新たな証拠も示さず、 「反論の為の反論」であり、時間稼ぎと言わざるを得ません。
 早期の勝利判決めざし皆様の更なる応援をお願いします。
第16号旧国鉄・JR大井工場アスベスト裁判ニュースより転載

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’22. 11 旧国鉄・JR裁判 【第11回口頭弁論】

 
《支援者ら21名が傍聴! 被告準備書面(6)は求釈明に回答せず(JR車両の石綿資料無し?》
死亡原因はコロナ、肺がんは喫煙・労災医員の判断は誤りと主張?
 2022年11月30日 旧国鉄・JR大井工場アスベスト裁判の第11回口頭弁論が東京地裁で 行われました。
 開廷前、地裁ロビーには支援者ら21名が集まり、10時30分からの裁判には全員が入廷 して熱心に傍聴しました。
 裁判長から、今回被告が11/22付で提出した準備書面(6)と乙24~29号証について確認が行われ、 その後、原告代理人に対して、今後の裁判の進行について意見が求められました。これに対し、 原告代理人の福田弁護士は、「今回提出の準備書面(6)中の、第3にある『原告死亡の業務起因性 (石綿ばく露との因果関係)について』反論する。その他はこれまでの被告主張と同じであると認識 している」と答えました。
 さらに、福田弁護士から原告からの求釈明(大井工場における取扱い車両の吹付石綿、アン ダ―シール、その他機器の石綿使用の実態と使用時期を明らかにするよう求めた)に対し、被告側 が「・・被告らにおいて調査したところ、大井工場での取り扱い車両等に特化した資料等は見当たら ず、これに回答するのは困難である」と回答したことを踏まえて、被告代理人に対して「見当たらな いのは大井工場に特化したもので、特化しない全体では明らかにできるのか」と質問しました。これ に被告代理人は「全体のものもJRでは見当たらなかった」と答えました。
 裁判長は、「次回は人証の日程を相談する」と述べた上で、次回までの原告反論書面の準備 期間を含めて次回期日を2月1日(水)10時30分よりと指定して閉廷しました。
 裁判終了後、法廷控室で報告した福田弁護士は、「石綿が車両に使われていることは専門誌 でも『電車の作り方』として紹介されており、求釈明で回答がなかったので改めて本当に資料がなかっ たのか確認した」「201系車両は腐食しにくく外板等に修繕がなかったと主張しているが、事実に反 しているし、彼らの主張は裏付け資料もなく、反論できていない」
「Kさんが亡くなった原因はコロナだが、死亡と肺がんは因果関係があり共働原因とする労働 局医員の見解に対して、肺がんは自身の喫煙の結果生じたのであり、石綿粉じんで発症したのではない のでこれは誤りであるとして労働局の労災死亡の認定をも否定している」「次回以降は、証人調べに 入る。原告の陳述と元同僚2名による証言を予定し準備していく。時期は5月頃になるのではないか」など と報告しました。
 傍聴支援に集まった仲間から、「裁判はこちらがリードしている、次回も傍聴席を埋めて支援 をしていく」(国労東京地本高瀬執行委員)、「同じ工場職場でもあり他人ごとではない。裁判勝利に 向けて協力する」(国労大宮総合車両センター矢部分会長)、「横浜、国府津退職者会の仲間と参加 した。国労神奈川地区大会でもアスベスト裁判支援を確認している。引き続き支援していく」(前国 労神奈川地区本部井草副委員長)、「東京OB会、久松幹事と参加している。会としても全体の問題と 位置付けて取り組みを強める」(JR・国鉄東京OB会藤野会長)、「元全国金属出身、国労大井工場支 部とは長い付き合い、共に闘ってきた。次回も傍聴する」(ノーモア水俣土田事務局長)、と激励の挨 拶がありました。最後に、原告Kさんから「皆さんの支援に感謝、父の職場環境が劣悪だったと 思い知らされた。これから自分も陳述の準備に入るので緊張している」とお礼の言葉がありました。
《次回 2023年2月1日(水)10時30分~ 》
被告の主張は相変わらず、肺がんは喫煙が原因、肺中の石綿小体が2709本で認定基準に達して いない、死亡したのはコロナが原因で、喫煙が影響したもので石綿は影響ないというものです。
世界一の鉄道会社?と自称するJR東日本に石綿使用車両の資料がないとするのは信じられません。 本当に調査したのかも疑問です。
 提訴以来、3年目に突入し来春には証人尋問と大きな山場に入ります。皆様の更なる応援をお願い します。
第15号旧国鉄・JR大井工場アスベスト裁判ニュースより転載

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’22. 9 旧国鉄・JR裁判 【第10回口頭弁論】

 
《原告準備書面(5)と新証拠も提出し、全面的に反論!》
 被告らの主張は総崩れ!いよいよ後半戦突入!!
 9月21日(火)10時半より旧国鉄・JR大井工場アスベスト裁判第10回弁論が東京地裁415法廷で行われました。 開廷前の 地裁ロビーに支援者ら18名が結集、 10分前には全員が法廷に入り熱心に耳を傾けました。
 今回の裁判は、前回裁判(7/13)で被告旧国鉄・JR側が提出した被告準備書面(5)に対して、 原告が全面的に反論する原告準備書面(5)を提出し、併せて証拠(甲28~34号証)を提出したことを 受けて、冒頭、その書面の確認と、提出証拠の原本を裁判官が確認しました。
 裁判長から、原告代理人に質問があり、今回の準備書面中の原告から被告へ求釈明の「車両の石綿 使用実態、形式別の使用状況の時期を含めて明らかにすること」に対して、被告側から書面が出された際に 反論するのか」との質問に、福田弁護士から「特に反論する予定はない」と発言。さらに、被告代理人に対 して出された書面への今後の対応を尋ねると、「車両のアンダーシールへの主張が無いように言われている ので調べてみたい」「甲34号のマスキング個所の不開示理由は何か承知しているのか」「開示請求をして いるのか」など原告に質問があり、これに対し原告代理人福田弁護士は「行政の判断でマスキングされた のであり、黒塗り箇所の内容やその理由について照会はしていない」と答えました。
 ※甲34号とは(品川労基署作成「調査結果復命書」:原告K氏が2021年1月24日死亡により、 妻Yさんがした労災遺族補償給付の調査復命書。業務上死亡と認定され、労災医員や主治医の意見書が添付 されている。黒塗り部分は労基署が不開示としたもの)
 被告代理人は、「調査には2カ月ほど時間を要するのでそれを踏まえて次回日程を入れてほしい」と発言、 裁判長は、次回期日は11月30日(水)10時30分からとし、被告側の書面提出期限は11/22であることが告げ られ、裁判は閉廷しました。
 裁判終了後、別室での報告集会で、福田弁護士から「今回提出した準備書面(5)は①国鉄・JRの車両 のアスベスト使用実態を主張・補充し、原告にもその実態を示せと求めた②現場における石綿ばく露の 実態を具体的に示し、作業者のマスク未着用の当時の写真なども提出できた③原告が死亡したことによる 遺族補償申請で業務上死亡と認定された事実を改めて提出した」「国鉄時代の古い専門誌に掲載された車両 への石綿使用を示す国鉄幹部の記事や論文、国労の機関誌に掲載されていた現場写真や記事など貴重な資料 を集め提出できた。お礼を述べたい」と報告がありました。さらに、山岡弁護士からは、「会社側提出の 陳述書は、事実や実態と違い、断定もできず歯切れが悪い不誠実なものだ」「会社側がケチをつけた黒塗り部 分の理由、行政の判断でされたものであり、必要なら被告が求めるべきだ」さらに「国に対し開示請求を求めた JRに対して行った石綿調査の結果報告が11/30までに示される予定であり、 これも活用していく」と報告がありました。
 参加者からは、「国労工作協議会としても廃車解体での石綿使用事例を調査している」(国労東京 総合車両センター白井分会長)、「東京OB会も総会で裁判を全面支援すると確認した、引き続き支援を 強める」(国鉄・JR東京OB親睦会藤野会長)「裁判闘争を聞いて駆けつけた。今後も支援していく」(元 JMIU品川、ノーモア水俣土田事務局長)「国鉄闘争支援で地域で一緒に闘ってきた。今は公害・大気汚染 裁判で運動している。アスベスト被害は深刻、支援していく」(日本航空OB、東京大気汚染裁判大島事 務局長)など激励・連帯の挨拶がありました。 最後に原告のNさんから支援者へお礼が述べられました。
《次回11月30日(水)10時30分~  次々回は証人尋問へ!》
 次回の会社側提出書面の内容は不明ですが、すでに主張すべき新たな事実もなく、自ら立てた陳述者の内容も、 これまでの被告主張を上書きするものでしかなく、矛盾と言い訳に終始するものでした。 今回新たな証拠の提出と厳しく反論されたことから、相当苦しい状況と見るべきでしょう。
 裁判提訴が2020年7月、すでに2年3カ月経過しますが、双方の主張も出尽くして、証人尋問も始まる後半戦突入です。 引き続き傍聴体制強化にむけ皆様の協力を呼びかけます。
第14号旧国鉄・JR大井工場アスベスト裁判ニュースより一部転載

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’22. 7 旧国鉄・JR裁判 【第9回口頭弁論】

 
《支援者ら18名が傍聴!》
 7月13日(水)13時10分から大井工場アスベスト裁判第9回口頭弁論が東京地裁415号法廷で開かれました。あいにくの強い 雨の中、12時半ころには支援者ら18名が地裁ロビーに集合しました。 国労東京OB会、国労東京地方本部、同大宮工場支部、同工作協議会、同神奈川地区本部、同東京総合車両センター分会、同大井工場OB会や 神奈川労災職業病センターの役員・支援者が傍聴に結集し、今回は法廷の入場制限がなかったことから全員が傍聴に入れました。
 裁判長は、提出された被告準備書面について確認を求めた上で、「今回の書面をもって双方の主張は出尽くしたと考えて良いのか」「今 後は証人調べに入ることで良いか」等今後の裁判の進め方について質問があり、原告代理人福田弁護士は、「被告が今回提出の準備書面に証拠 や陳述書も提出して反論したい」「準備検討に2カ月程度要望したい」と発言、被告代理人も「書面による主張は基本的に今後ない」とし、裁 判長は、「次回の期日に、次々回以降の尋問の期日を決定することとしたい」と述べました。また、双方の尋問予定者についても質問、原告側 は「原告本人と陳述書提出の元同僚2名を考えている」、被告代理人は「陳述書提出社員の内1名を証人としたい」と発言しました。裁判長は、 次回期日を9月21日(水)10時30分と指定し、裁判は終了しました。
《次回9月21日(水)10時30分~  次々回は証人尋問へ!》
 閉廷後に行われた報告会で、原告代理人福田弁護士から裁判の概要と今後について報告があり、被告側提出の書面と陳述書について 「元同僚で助役らによる陳述書だが、石綿はなかったとか、対策をとっていた等とするもので、次回はこれに具体的証拠や陳述書をつけて 反論したい」 「次々回以降は尋問の協議が始まり、裁判はいよいよ後半戦、本格的な攻防が始まるので引き続き支援を」と訴えがありました。 原告Kさんよりお礼のあいさつの後、支援組織から、国労東京地本、同大宮工場支部、国労東京OB会、 神奈川退職者OB会など最後まで支援を続けるとそれぞれ挨拶を受けました。
 また、Kさんの後輩で昨年中皮腫により労災認定を受け闘病・治療中のSさんも裁判を傍聴し、 報告会で近況報告をしました。
《提訴2年 JRと旧国鉄の嘘と詭弁を許すな!》
 裁判は、2020年7月6日に提訴して2年が経過、これまで9回の口頭弁論と進行協議が一回行われてきました。
 2021年1月24日には原告のKさんが逝去されましたが、Kさんご子息が裁判原告として引き続き 裁判闘争を続けています。裁判を支援する会も2020年12月に発足、現在11の団体会員と71名の個人会員を 組織しています。
 被告側の主張は、「肺がんが発症したのは喫煙が原因」「原告の肺の組織にあった石綿本数は2,709本に過ぎず認定 の5000本に満たない」「原告が主張する気吹作業は一時的で影響がなかったし換気されていた」「アスベストを扱う場面も 短時間でごく稀であり湿潤しているので問題なかった」「保護マスクを配布し着用を指導していた」「原告Kは大量の 石綿粉塵に暴露されていなかった」等とするものです。
 労働基準監督署が石綿による肺がん発症を「労災認定」したことを「関係ない」とうそぶき、これまで原告側が 示してきた医療記録や職場実態をことごとく否定し、事実を歪曲し自らに都合の良い言い訳に終始しているのが被告の主張です。 日本一の鉄道事業者JR東日本と国の機関で旧国鉄を引き継いだ鉄道運輸機構として、被災者へ寄り添い、 公正な補償を行うことこそ求められるのに、人道も法令遵守も顧みない態度こそおおいに非難されるべき です。
 引き続く裁判支援の強化と、新たな証拠の発掘・提出に向けて皆さんの情報提供もお願いします。
第13号旧国鉄・JR大井工場アスベスト裁判ニュースより一部転載

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’22. 4 旧国鉄・JR裁判 【第8回口頭弁論】

 
《支援者24名の熱気が会社側を圧倒》
 4月26日、旧国鉄・JR大井工場アスベスト裁判の口頭弁論が開かれました。
 15時からの裁判でしたが、あいにくの雨の中でも14時ころから支援者らが続々と裁判所に詰めかけ、 24名が傍聴行動に参加しました。
 法廷前では、入廷を待つ会社の担当者から「今回は大勢来ていますね」とこちらの動きに注目発言、 廷内では参加者数などを記録していました。415号法廷に入廷できた支援者は14名で、他の方は控室で待機となりました。
 今回から裁判官が交代しており、(裁判長:大竹敬人裁判官、芦田泰宏裁判官、中原諒也裁判官)、 裁判長から交代となった旨発言があり、今回裁判所に提出した原告準備書面(4)と各甲号証の確認が行われました。
《ホントに出すの?》
 双方が意見を求められ、被告JR・旧国鉄代理人は、「被告側も大井工場の社員2~3名の陳述書を提出したい」と発言。
 原告代理人の山岡弁護士から、原告準備書面(4)について概要説明が行われました。
 被告準備書面(3)への反論として、鉄道車両に多量のアスベストが使用されていたこと、それを示す国等の資料、 鉄道職場での石綿疾患の業務災害認定状況、とりわけ工場職場が全体の認定者の55%を占めていること、原告職場OBらの石綿健康管理 手帳取得運動で明らかとなった、原告を除く健康診断受診者23名のうちプラーク等の有所見が14名にのぼり「石綿疾患予備軍」であることを 述べました。また、これまで繰り返し原告が主張する肺がんの原因がタバコであることについて、原告の石綿暴露と肺がん発症、死亡には その従事期間や職場実態から因果関係が充分あることを具体的に述べました。
《1980年(s55)には調査していた!》
 被告が「安全に配慮していた」とする主張には、今回提出した元同僚のG氏やI氏の陳述書の内容も引用し、 職場実態からその「嘘」を具体的に反論しました。 さらには、被告らの石綿被害の予見可能性の否定について、1980年には、札幌鉄道病院 の国鉄の医師らが鉄道工場で石綿による健康被害が多発している実態を把握・調査し、それを論文として発表していたことから「知らないわけ はない」と事実を突きつけました。
 これに対し被告代理人は「反論書面を出したい」と述べるにとどまり、準備のために2カ月ほどの期間を要望しました。
 原告代理人福田弁護士から、今後の考え方について「陳述書提出の同僚2名と原告ご子息の一人を証人として申請したい」 「それ以外については未定である」と発言がありました。
 裁判長から、次回の被告反論書面をもって次々回は証拠調べに進むべく日程の相談を行うと発言があり、次回の裁判は、7月13日(水) 13時10分からと期日指定され裁判は閉廷しました。
《いざ後半戦へ 次回7月13日(水)13時~ 引き続く支援を!》
 裁判集了後に法定控室で行われた報告会で、福田弁護士からは「同僚であったG、I陳述書は職場実態をもとに相手を追い詰め ているし、神奈川労災職業病センターと工場OB会が進めた石綿健康手帳による健康診断結果は24名中の8名にプラーク所見があり、全国の国鉄 退職者の業務上災害認定者のうち55%、特に工場で石綿疾患が多発している」と報告。
 山岡弁護士からは「被告が繰り返す肺がんの原因がタバコであるとの主張にあらためて反論した」「1980年(昭和55年)当時の鉄道病院 医師らが調査した鉄道工場労働者の石綿疾患の論文を発見・提出し、予見可能性はなかったとする『嘘』を指摘した」と説明が行われました。
 続いて原告のKさんから「昨年1月父が80歳で亡くなったが、死を無駄にしたくない。働く人の安全を守るための裁判だと思う」とお礼と決意が語られました。
 支援者を代表して、国労神奈川OB会の姉崎さんから「神奈川でもアスベストの裁判を取り組み、旧国鉄と勝利和解した。手帳取得の運動も 100件を超えた」「これからも連帯して行こう」との挨拶があり、国鉄・JR東京OB会の鈴木さんからは「現役時代は、裁判担当でよく通った地裁だが、 久しぶりの法廷で思いを新たにした。引き続き支援したい」との挨拶がありました。最後に、国労東京地本の高瀬執行委員から「いよいよ裁判も 本格的になりつつあり、地方本部も引き続き支援したい」と表明がありました。
 今回傍聴支援に参加した方々は、JR大井工場OB親睦会、国鉄・JR東京OB親睦会、神奈川労災職業病センター、国労東京地方本部、 国労東京総合車両センター分会、国労神奈川OB会の皆様総勢24名でした。
 ありがとうございました。次回もよろしくお願いします。
第12号旧国鉄・JR大井工場アスベスト裁判ニュースより転載

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’22. 2 旧国鉄・JR裁判 【第7回口頭弁論】

 
《支援者ら15名が結集》
 2月15日(火)午前10時より東京地裁415法廷において、旧国鉄・JR大井工場アスベスト裁判第7回口頭弁論が開かれました。
 当日は、新型コロナオミクロン株が猛威を振るう中にあっても、国労各機関役員や組合員、国労OBなど裁判支援者15名が9時半過ぎには 集合し、裁判に臨みました。
 一方、被告JR・旧国鉄の関係者ら8名が入廷し原告側の傍聴体制を含めて裁判を記録していました。
行われました。原告代理人から、原告死亡により損賠請求額と弁護士費用を訂正したこと及び原告家族による裁判の承継について説明しましたが、 これについて被告代理人は、「裁判は我々が勝つので別にどうでもよいが、訂正手続きで争うつもりはないが相続した家族が共同で請求すること はおかしいことを指摘しておく」等と述べました。 裁判長から、今後の裁判の進め方について双方に質問があり、原告代理人福田弁護士は、「被告準備書面(4)に対する反論・立証をしていく 。また、主張と共に当時の職場実態について陳述書を提出して行きたい」「旧国鉄・JRのアスベストの実態について立証をしていく」と述べまし た。これに対し被告代理人は「原告の反論を見てから対応を考えていく」と述べました。裁判長からは、次回の双方の主張を踏まえて、人証調べ に入っていくことで良いかとの発言があり、次回期日については、4月26日(火)15時からと指定され裁判は閉廷しました。
《被告 苦しい言い訳》
 裁判終了後、法廷控室で支援者らによる報告会が行われ、福田、山岡弁護士から、裁判のポイントと今後の流れについて報告が行われました。「請求額の訂正は、原告死亡による通例にならい2700万円から訂正したものであり、三千八十万円というのは弁護士費用も含めたもの」「相手がおかしいと言うのは承継した二人で3080万円なのか、一人1540万円なのかという形式的な難癖」と説明があり、1月末に提出のあった被告準備書面(4)については、「①被告が主張するのは労災認定の事実だけでは、石綿が肺がんとなった原因とは言えない②カルテを見ても石綿が肺がんの原因である点は明確ではない③こちらが求めた車両からの石綿除去の事実については具体的に示すこともなく『実施した』と述べるのみで、石綿代替品のイビウールについてはその導入時期を示すこともなく『社員が記憶している』などと記述し資料もなくでたらめで信用できない」と批判しました。また、「原告が指摘した実際にはなかった車修場天井の換気扇について誤りを認めて訂正したことなど、私たちの主張が反映されている」ことも紹介されました。 次回までには元大井工場同僚のG氏(旧鉄工職場→部品一科)やI氏(同第2電車職場→車体二科)らによる職場実態 を陳述書として提出することも報告があり、「次回以降双方のやり取りで次のステージに入ることとなる」と報告がありました。 また、山岡弁護士からは「被告の主張は、『相対リスク二倍に満たないし、基準である肺中の石綿小体数5000本に満たない2709本である』 ことにこだわり、5000本を強調して肺がんと石綿の関係性をぼかすものだ」と批判、「今後作業の実態をしっかり示していくし、情報公開請求 でJRの石綿除去実態の一部が近日厚労省から届く予定である」ことも報告されました。
《次回4月26日(火)15時~ 引き続く支援を!》
 裁判は提訴以来、1年と7か月が経過、口頭弁論も7回開かれ、いよいよ次回以降は証拠調べ(証人調べ)のステージに入ります。被告側の主張は、相も変わらず「肺がんが発症したのは長年の喫煙が原因である」「肺中の石綿本数は基準の5000本に満たぬ2709本である」 「国の通達が出て以降車両の石綿は除去したのは間違いない」「職場は肺がんとなるような環境ではなく安全対策はとっていた」とするものです。
 これまで、実態を示し相手の反論を見てきましたが、具体的な資料も示さず被告JRと旧国鉄は苦しい弁明に終始して来ました。最近は裁判への動員数も危機感からか増やしており、さらなる傍聴支援体制を強化していかなければなりません。
 裁判終了後に、支援する会と国労役員との意見交換を行いました。コロナ感染症の早期収束を願うばかりですが、今年は、原告と裁判を支援する会、国労各級機関が節々で集会や学習会等を企画して、裁判勝利に向けてスクラムを組んで行こうと意思統一を行いました。
第11号旧国鉄・JR大井工場アスベスト裁判ニュースより転載

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’21.11 旧国鉄・JR裁判 【第6回口頭弁論】

 
《第6回口頭弁論開かれる》
  11月9日(火)旧国鉄・JR大井工場アスベスト裁判の第6回口頭弁論が東京地裁415法廷で行われました。 当日は、激しい雨の中、支援者、国労役員など18名が13時過ぎには傍聴のため地裁ロビーに集合しました。 定刻14時より少し早めに裁判は始まり、裁判長より、11/2に原告提出の準備書面(3)の確認を行った上で、 双方に意見を求めました。 被告代理人は「文書送付嘱託により資料が届き、膨大な医療データのため精査・検証に相当の時間がかかる」 「今回原告提出の準備書面(3)に次回まで反論する」とした上で「書面は1月末以降に提出する」と述べました。
 原告代理人からは、特に意見は述べませんでしたが、裁判長から「今回提出の原告準備書面で求釈明が数点あるので 対応するよう」被告側に指示があり、次回裁判は、年明けの2月15日(火)午前10時からと指定され閉廷しました。
《次回 2022年2月15日(火)10時》
 閉廷後、控室で行われた報告会で福田、山岡弁護士から裁判のポイントについて報告があり、 「被告準備書面(3)に対し労災認定になった事実をもとに本筋に戻って全面的に反論したもの」 「前回の相手の書面主張に対し現場の作業環境や作業実態から具体的に反論した」「今後、さらに 現場の実態等で陳述書を作成して提出していく」等の報告がありました。
 原告Kさんのご子息から支援へのお礼が述べられた後、傍聴行動に参加した 国労本部岩元書記長から「過去の神奈川アスベスト裁判なども重大な関心を持っていたし、 今回の裁判も可能な限り支援したい」と挨拶がありました。また、国労東京地本の高瀬執行委員からも 激励の挨拶を頂戴しました。傍聴には、国鉄・JROB親睦会の藤野会長、同幹事の久松さんはじめ、 国労東京総合車両センター分会役員や大井工場OB、支援する会役員や神奈川労災職業病センター池田さんらが参加しました。
《原告準備書面(3)とは 被告側の「難くせ」「へ理屈」に全面的に反論》
 11/2に提出した原告準備書面(3)とは、8/31に提出された被告準備書面(3)に対する反論の書面です。 相手の主張概要は、「原告体内に残存した乾燥肺重量1gあたりの石綿小体本数が2,709本にすぎないので肺がんは石綿に 起因するものとは言えない」「原告は57年間、一日20本という大量の喫煙をしており、肺がんは喫煙に起因することは明らか」 「石綿と肺がんの因果関係に関する基本的理解に誤りがあり主張は法的に理解不能」等とするものでした。
 これに対し、①原告が労災認定された理由は「両側で下肺野を中心に石綿肺所見があり、かつ両側に胸膜プラークも 認められること」「石綿ばく露作業に約40年間従事していたこと及び、発症が最初のばく露から10年以上経過していた」のであり、 労災認定基準を満たしていたことを改めて強調しました。さらに、労災認定基準では、石綿小体数は認定要件となっていないこと、 また、石綿小体数が少ないことが労災認定の除外要件ではないこと。原告は労災認定基準を満たすことで因果関係を認めるに足る 石綿ばく露があったこと。さらに、石綿肺所見があることで、原告が認定基準を超えた高度の石綿粉じんばく露があったと反論しました。 また、石綿ばく露による肺がん発症リスクについて詳細に反論した上で、原告は、「喫煙あり・石綿ばく露あり」であって、ばく露が なかった場合と比べて5倍もリスクが高いことから、石綿ばく露によって高められた肺がん発症の危険性が現実化したものである。 したがって、原告は、プラーク所見+10年以上の石綿ばく露作業によってリスク2倍の基準を満たし、因果関係が十分認められるところ、 石綿肺所見及び40年に迫る長期の石綿ばく露作業従事により、極めて高度の石綿粉じんにばく露されていた。 そして、喫煙と石綿ばく露が相乗的に肺がんの危険性に作用することから、原告の肺がん発症は、 石綿ばく露によって飛躍的に危険が高められたことが原因で、被告らの安全配慮義務違反による 石綿ばく露と原告の肺がん発症には因果関係があるとしています。
 また、大井工場における石綿粉じんの実態について、車両や修繕業務の実例を挙げて被告書面の矛盾と?に ついて反論しました。被告は、ステンレス車両の205系の導入や、鉄製の201系車両には外板修繕等はごくまれであって、 「石綿粉じんに関わる車両、作業は減少していた」と主張していますが、原告が作業していた当時、鉄製車両が多数あり、 外板やその他溶接・切断等の作業も相当数あったこと、特に201系については、先頭車両前面部やドア回りも腐食による 切り張りや修繕があったこと、さらに、室内床部に腐食による床面の膨張や凹凸が発生し、床板の切断・溶接等の作業が 発生していたことを明らかにし、かつ床板や戸袋 内など石綿含有のアンダーシールが使用されていたことも具体的に指摘しました。このように被告の主張は実態と 全く異なるものであることを示したうえで、求釈明①201系車両床修繕で補修は「パテで覆う点溶接の方法による」 との主張であるがパテで穴埋めすることと溶接がどのように関係するのか明らかにすること、②「1988年以降外板切断・ 溶接作業を要する吹き付け石綿の車両については、作業に先立ち車体から石綿除去を行っていた」とする主張に、 その事実について聞いたこともなく、いつから、どの段階で、どの形式車両で、車体のどの部分をいかなる方法で 石綿除去を行ったか、除去後の石綿処理や作業はだれが従事したのか明らかにすることを求めました。 さらに、③被告は、平成元年以降石綿板に代わってイビウールボードに置き換えたとするが、 これを使用する旨の社内通知文書等を提出すること、イビウールボードの資材調達・在庫管理の記録等を提出することを 求めました。
 また、原告らのガスバーナーの火口交換作業では、交換する火口接合部には石綿がパッキンとして使用されており、 主張は誤りであることも指摘しています。
 粉じんばく露防止措置等について、①気吹作業では、被告は「昭和60年以降、気吹作業は別棟のPCAにて行っており、 原告が大量に石綿ばく露されていたなどいうことはない」と主張していますが、PCAでの気吹作業は一部であり、車体研修場では 日常的に気吹作業が行われており、その実施時間も事前に周知されてはおらず、必要に応じてその都度行われ、埃がもうもうと 立ち込める状況であったと指摘しました。②車体研修場の換気について、被告は「車体研修場には、天井に設置の換気扇を回し たり、同場のシャッターを開けるなど必要な排気・換気は行っていた」と主張、しかしまず、車体研修場の天井には換気扇はなく、 そもそも同場の2階は部品修繕等の作業場であり、構造上換気扇は設置できないこと、天井にあったのは送風機と蒸気暖房の送風扇 のみであること、さらに同場にはシャッターはなく、鉄製の引き戸であり、必要の都度関係社員が開閉を行っていたことを指摘しま した。さらに、粉塵発生作業場に求められる局所排気装置や全体換気装置等は設備されたことはないこと、被告が設置したと主張す る「移動式吸塵装置」は、いつごろ、どんなものか具体的な説明が全くなく「当該設備を設置したことは間違いない」と断定する のみで、これでは設置使用していたとは言えないと反論しました。 車体検修場では、気吹等で舞い上がった埃が滞留し、排気、換気策は取られておらず、従事した業務の8割方はこの車体検修場で行われ、 直接の現車鉄工による石綿ばく露に加えて、気吹き作業等による石綿粉じんを吸引し、ばく露があったことを明らかにしました。
 車体改造場での換気について、車体改造場は1990年代半ばまで存在していましが現在は存在せず、被告が関係資料を提出する以外 にその構造や換気装置等を確認することはできず、主張する仕切り板や換気扇がどこにどのように設置されていたかいなかったかも実際は 不明である。被告が示す大まかな図解では不明であり、その換気扇の換気能力を含めて資料で提出すべきであり、それができないのであれ ば有効な換気とは言えないし、法に適合する換気装置であったとは到底思われないとしました。
 防塵マスクについて、被告は、昭和51年にはプラズマ小委員会でマスク着用を指導していたことは「確かな事実である」とし、原告 がマスク着用をしなかったのは原告の責任によると主張している。しかし、プラズマ小委員会なるものの存在及び活動、マスクの着用指導に ついて、依然として具体的説明や資料の提出はなくただ「確かな事実である」と断定するだけで、当時職場で配布されたのは簡易な布マスク にすぎず、簡易なフィルター付き防塵マスクが備えられたのは昭和50年代終盤であったこと、本来の防塵マスクが備えられたのは平成2年頃で あったことは原告準備書面(2)で指摘したが、これに対する反論はないことを指摘しました。
 防塵マスクを着用することは、労働者の自己責任ではなく、これを着用させる使用者の義務であることを具体的判例で示して批判し ました。
 被告らによる石綿の健康被害の予見可能性について、被告らの負う安全配慮義務の予見義務の内容は、アスベスト等の粉じんの安全性 に疑念を抱かせる程度の抽象的な危惧であれば足りるのでり、国内でも1955年(昭和30年)には、発がん性を含む危険性の知見が確立され、被 告らは認識が可能であったことを具体的判例を引用し、被告らが「有害性を認識したのは昭和47年である」とする主張が誤っていると指摘しま した。
 さらに、被告は、実際に運用に供される電車を原告が修繕し、その車体にアスベストが使用され、かつ溶接作業等では配管保護等で アスベストを使用していたことなど知悉しており、被告らもこれを認めている。しかし、業務による危険性について認識できないとするが、 鉄道車両の内部に断熱材として石綿が詰められ、アンダーシールが用いられていたこと、溶接がその作業の性格上、石綿疾患に罹患するのでは ないかという危惧感を抱くに十分な石綿ばく露実態があり、被告らは何れもこれを認識していたのであり、原告が石綿疾患に罹患する危険性を 予見することはできた、と反論しています。
第10号旧国鉄・JR大井工場アスベスト裁判ニュースより転載

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’21.9 旧日立田浦工場アスベスト裁判 勝利判決

 
 8月30日、横浜地裁横須賀支部にて日立パワーソリューションズを相手どったアスベスト損害賠償裁判判決があった。被告は2200万円を支払えという勝利判決。日立は控訴せず、 9月15日付判決確定となった。
1)裁判に至る経過
 原告のKYさんは1941(昭和16)年生まれ(80歳)、1961年に会社(当時は㈱日立田浦工場)に入社、 本人の意見陳述書によると 「製缶構造物の溶接班に配属され、産業機械・発電設備等の製作に従事しました。 当時は予熱後熱を必要とする金属を溶接する時において アスベストのシートで保温しており、相当濃密なアスベスト粉塵に暴露されていました。」とある。 アスベスト対策はほとんどなし、1999年3月に退社、 その後2015年12月に悪性胸膜中皮腫を発症、2016年のKYさん誕生日に横須賀共済病院にて 胸膜剥皮術を受ける。翌年の2016年に労災認定となった。
 KYさんは、2017年1月、病床で知り合った人から紹介され、アスベスト加害企業に対して 被害者への補償を追求しているアスベストユニオンに加入、 会社との団体交渉を開始。日立パワーソリューションズは上記のような作業内容や、アスベストに対する 安全の不十分さ、そしてすでに退職者で数名のアスベスト被害者が 発生していることを認めたが、KYさんに対してどのような補償をするのか、また補償制度を作るのか、 との点に関しては「日立製作所本社が検討中なので待っている」と 答えるのみで誠意のある対応はなかった。
 そこで、KYさんはやむなく2019(令和元)年10月裁判を提訴。
 KYさんは、審理に際しての意見陳述で提訴に至った気持について次のとおり述べている。
「会社には、当事者意識がゼロでした。会社の仕事によって体力が衰えた人の命をもてあそぶような、 また死ぬことを待つような振る舞いや、時間稼ぎは許せません。ですから日立パワーソリューションズを 安全配慮義務違反で横浜地裁横須賀支部に提訴したのです。
 会社は日立本社のことを持ち出しています。しかし、それなら日立本社がアスベスト被害に対して きちんとすべきことです。
 世界的企業グループが、人の命をないがしろにして平気だとは思いたくありません。
 これからもまだ同僚などからもアスベスト被害が出る可能性があります。 私と同じような思いをさせたくありません。命あるうちに、今しかないので、 会社は救う道を構築していただきたいと思います。」
2)裁判では
 裁判の中で会社は、団交での発言と違い、当時の職場におけるアスベストに関する資料は、 東日本大震災の津波で全てダメになったと主張。労基署に出した会社側資料には当時のアスベスト使用状況を イラスト入りで提出していたにもかかわらず、であった。
 会社の最終準備書面での主張は、KYさんは入社前の勤務先で石綿に曝露し中皮腫になった 可能性が十分にあり、会社業務に従事したこととの因果関係は立証されていないとか、アスベストによる 中皮腫発生は昭和47年(1972年)頃まで予見できなかったものであり、KYさん入社時から昭和47年までの アスベスト曝露については責任がなく、仮に、昭和47年以降に会社に安全配慮義務違反があったとしても、 それ以前のアスベスト曝露の結果かどうか立証されていないから会社には責任がないというものであった。
 裁判所は和解について何回か場を設定。KYさんは、会社がお金を支払ってそれで解決するといった やり方は納得できなかった。被害がでるかもしれない人たちのために、せめて補償規定を作るように求めた。 しかし、会社は補償規程を生存者にも拡大することはあったとしても、その改訂時期については日立本社との 協議の上で進めるため明らかにすることはできないとの態度で、会社が労働者に与えた深刻な健康被害について、 真摯に取り合おうとはしなかった。このため、2021年5月31日に結審。判決言い渡しは同年8月30日となる。
 
3)判決を迎えて
 今回の裁判を考えてみると直接の当事者、日立パワーソリューションズはもとより㈱日立製作所本社の責任は 大変重いと私たちは考える。
 日立製作所本体ではこれまでにアスベストにより労災となった方の数はパワーソリューションズを含め 100名近いと言われている。しかし、このような多くの被害者を出している㈱日立製作所(日立本社)が 何らかの責任ある態度を今までとってきたのかという点だ。
 現在岐阜地裁では、日立製作所の笠戸工場で車輌製造に長年携わり定年退職後中皮腫を発症、労災となって 亡くなった方の遺族の裁判が続いている。笠戸工場では30名以上の方がアスベストで亡くなっており、車輌製造に おいて大量のアスベストが使われてきたのは周知の事実。亡くなった方は車両の配管の艤装工程を担っていましたが 日立は「アスベストはなかった」と強弁し続けている。多くの被害者が出ているのに!
 また日立のアスベスト被害に対する補償は「退職後アスベスト労災で亡くなった場合に1000万円」と あるだけで療養中や労災中に別の理由で亡くなったケースには補償はナシである。
 団体交渉の中で、療養中も含めた補償制度を作るようにという私たちの要求についても日立パワーソリューションズは、 「日立本社が検討中のようで・・・」と繰り返すばかりであった。つまり本社が動かなければ、何も始まらない という構造になっていることが明確である。このような子会社の補償制度についても本社が関与していることが 明白であり、改善を求めるため、本年4月日立製作所に対し団体交渉の申し入れを行ったが、今もってまったく返事は ない。
 建設アスベスト問題では、国はその責任を認め謝罪し、未提訴者救済金制度を創設した。本件は、それよりも はるかに会社側の責任が明らかな事案である。にもかわかわらず日本のリーディングカンパニーである日立本社が アスベストについての責任をとろうとしないというのは納得できない。
 今回の裁判が、日立パワーソリューションズのKYさんの問題にとどまらず、日立製作所本社についての反省と 被害に対する誠意ある対応を促す一歩となるよう期待する。
アスベストユニオン 早川寛
《判決確定の報せを受けて》
 今までの会社の対応を見ると控訴してくると、長引くだろうと思っていました。「控訴せず」と報せを受けたときは 「えっ」と思いました。日立本社にも団体交渉の申し入れを行ったことが、この結果に結びついたのかなと考えています。
 ただ今は、補償制度の見直しについての構築が全く見えていません。私のようにアスベスト被害を受けた退職者(労働者)や家族に対して、 安心して暮らしていけるように、日立は誠意ある対応を、つまり新たな補償制度を作っていただきたいと思います。
原告 KY

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’21.9 旧国鉄・JR裁判 【第5回口頭弁論】

 
《支援者ら20名が結集》
 9月14日(火)午前10時からアスベスト裁判第5回口頭弁論が東京地裁415法廷で開かれました。
 この裁判は、原告KNさん(1月逝去)が、肺がん発症が石綿暴露によるものとして労災認定されたことを踏まえて、 昨年7月に旧国鉄とJR東日本を相手取って、「肺がんの原因はアスベスト暴露によるもの」 「旧国鉄とJR東日本は安全配慮義務を怠った」として 損害賠償を求めたものです。開廷前の地裁ロビーには、国労機関役員や組合員、 国労大井工場支部OB、国鉄・JR東京OB親睦会など支援者ら20名が集まり、法廷には14名が入廷しました。
 定刻を少し前に始まった裁判では、小田裁判長から8/31に提出された被告準備書面(3)と乙号証について 確認があり、今後の進め方について双方に意見を求めました。
 被告側は、カルテの全部が開示されていない「欠落している」とし、改めて提出を求めると要求しました。
 これに対し、原告側代理人福田弁護士から、「被告の求めに応じて主治医からすべての診療記録を提出したのに書面では『疑わしい』とはどういう意味なのか。 大変心外である」「必要なら手続きを経て裁判所を通じて病院へ提出を求めては如何か」と反論しました。 裁判長から被告に対し、「仮に全部の記録がなければ反論できないのか。必要であれば申し立てしてほしい」と聞くと、 被告は「その旨手続きを経て進めていく」とし、「追加分が提出された時点で改めてそれについて検討し主張したい」と しました。福田弁護士から「今回の被告準備書面(3)には、事実面や安全配慮義務について反論する」と述べました。 裁判長は、「双方そろそろ主張についてまとめる方向でどうか」と考え方が示され、わずか12分ほどで裁判は閉廷となりました。
《被告準備書面(3)とは》
  今回提出の書面概要は、「原告の体内に残存した 乾燥肺重量1gあたりの石綿小体本数が2,709本にすぎないので 肺がんが石綿に起因するものとは言えない」「原告は57年間、一日20本という大量の 喫煙をしており、肺がんは石綿によるものではなく喫煙に起因することは明らかで ある」「石綿と肺がんの因果関係に関する基本的理解に誤りがあり主張は法的に 理解不能である」「石綿による肺がん等の健康被害の可能性について認識したのは、 昭和63年(1988年)3月の各都道府県労働基都局長あて通知において、鉄道事業の 解体作業等に伴う石綿ばく露の危険性が指摘されて以降のことであり、 それ以前には、石綿による発がん性等の健康被害の可能性について認識、 予見していたことはない」また、「肺がんの手術の前後に 係る診療録の大部分が欠落しており、その資料の全部の提出があったのか 極めて疑わしいので、診療録のすべてを提出せよ」等とし、「原告の主張は 理由がなく速やかに請求は棄却すべき」とするものです。
《次回期日は11月9日(火)午後2時から》
 閉廷後、控室で行われた報告会で福田、山岡弁護士から裁判のポイントについて報告があり、 「被告の準備書面(3)は法律論や診療記録でケチをつけているが、『車両数が減少し外板修繕が必要なくなっていた』とした 主張は、こちらが調べて提出した鋼製車両数の推移で当該作業が相当数行われていて、その事実を認めざるを得なかった」 「裁判は、ここまでいわば口によるやり取りで、今後は本格的なとっくみ合いになる」「当時の実態を証明する仲間の陳述書などを 作成・提出して立証していく」「原告KNさんが亡くなっため、損害賠償額の変更を求めて裁判を進めていく」等の報告がありました。
 原告KNさんの裁判を引き継いだご子息から支援へのお礼が述べられた後、今回裁判を初めて傍聴した STさん(JRエルダー社員;交通機械サービスに出向)が紹介され、「先の特殊健康診断で肺に影が見つかり、 中皮腫であると診断された」「東労組から国労に復帰して労災申請に自らも取り組むので一緒に頑張りたい」と 決意が語られました。 傍聴者、支援者を代表して国労神奈川地区本部の粉川書記長から「アスベスト問題は、重要課題として取り組んできたし、 この裁判も労働組合の課題としてしっかり支援したい」と挨拶がありました。
第9号旧国鉄・JR大井工場アスベスト裁判ニュースより転載

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’21.6 旧国鉄・JR裁判 【第4回口頭弁論】

 
《提訴後1年に》
 6月8日、旧国鉄・JR大井工場アスベスト裁判の第4回口頭弁論が東京地裁で行われました。
 この裁判は、原告KNさんが、肺がん発症が石綿暴露によるものとして労災認定されたことを踏まえて、 昨年7月に旧国鉄とJR東日本を相手取って、「肺がんの原因はアスベスト暴露によるもの」 「旧国鉄とJR東日本は安全配慮義務を怠った」として損害賠償を求めたものです。
《17名が結集》
 裁判は、これまで3回の口頭弁論と1回の進行協議が行われてきました。 この間原告であったKNさんは、今年1月新型コロナウイルスにより急逝されましたが、 ご家族が裁判を引き継ぐこととなりました。
 10時からの裁判には、国労各機関役員、組合員、OBなど支援者17名が集まり、内16名が傍聴に臨みました。
 開廷後、裁判長から5月31日付提出した原告準備書面(2)について双方に確認を求めた上で、 被告旧国鉄・JRに対して、意見を求めました。
 これに対して被告は、原告準備書面(2)に反論するとし、「原告主張の肺がんとの因果関係は良いが、 安全配慮義務違反の主張はあたらないし、反論する」、喫煙による肺がんリスク2倍については、 「喫煙、石綿どちらが原因かわからないので、カルテを見た上で判断しなければならないが、 いまだ提出されていない」「喫煙による肺がん発症は病理疫学上、蓋然性がある」などと主張、 これには、裁判長からも原告側にカルテ提出の意向について質問があり、原告側は、「現在提出にむけて 準備中であり1か月以内には提出できるであろう」としました。
《次回は9月14日10時から》
 被告側は、「カルテ提出後にその検証・検討して反論するので、それを踏まえた次回期日を希望する」と主張し、 次回期日は9月14日(火)10時からとなりました。
 また、裁判長からは、今後の双方の主張に関して、「あと1~2回書面で行うつもりなのか」との意向確認がありました。 原告、被告とも「お互いの主張にもよるがそうなると思われる」としました。
《被告主張に根拠と事実をもって 全面的に反論》
 今回提出の原告準備書面(2)は、被告JRの主張「肺がんは喫煙が原因」 「粉じん対策や安全対策を実施しており責任はない」に対して、全面的に反論するものです。 「肺がん発症は、喫煙か石綿曝露か特定できない」「喫煙と石綿が相乗して作用する」のだから、 「そのリスクを踏まえた安全配慮義務をとるべきだった」とし、仮に、喫煙が発症を2倍化させるとしても 「原告に相当の石綿曝露があったのだから、喫煙をしていてもそれに応じた責任を負うべきである」としています。 さらに原告からは医学的にも、「職業的石綿曝露水準をはるかに超える石綿小体が検出されており、 2型の石綿肺所見であることから肺がんが発症する現実的可能性を持つ十分な石綿曝露であった」としています。
 さらに、「受持ち車両の減少によって作業自体が減った」とする主張には、当時のデータなども引用して反論、 吸塵機や排気装置を設置したとする主張には、「具体的に粉じん対策の吸塵機や排気装置を設置したとする証拠が 示されていないこと」など、当時の作業実態からもどのような対策とっていたか全く不明であると断じています。
《引き続き支援を!》
 裁判は、提訴1年を経てようやく争点・論点が明確となってきたこともあり、あと数回の書面での主張、反論を経て、 証人採用などの段階へと進むと思われます。
 裁判傍聴体制の強化、支援する会の拡大、学習会等の企画も進行に応じて進めていきます。
 皆さんの引き続くご支援をお願いします。
第8号旧国鉄・JR大井工場アスベスト裁判ニュースより転載

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’21.3 旧国鉄・JR裁判 【第3回口頭弁論】

 
《被告:肺がん原因はタバコ! 石綿使用は2カ月程度!?と珍妙な主張》
 3月31日、東京地裁にて旧国鉄・JRアスベスト裁判の 第3回口頭弁論が開かれました。
 原告KNさんが1月24日急逝され、 代わって二人のご子息が裁判を引き継ぐこととなりました。 当日は、9時半過ぎには原告、支援者ら16名が地裁に集合し、 10時からの裁判には15名が傍聴に臨みました。
 裁判長から、3/15付被告準備書面等について確認、 被告代理人に今後の考え方について質問がありました。 「被告準備書面には、いろいろ主張がある。 それぞれ書面にて反論をすることになるのか」 「たばこを吸っていたことで肺がん発症の可能性が 2倍とする説明を」、これに対して被告代理人は 「肺がん発症はたばこが原因、原告は1日20本35年も 吸っていたのである、肺がん発症のリスクが2倍は医学的見解だ」 「乾燥肺1g中石綿5000本が認定基準であり、 原告は2700本ほどでありたばこが原因、 それに石綿が影響したもの」 「肺中の1g石綿2700本はたいしたものではない。 石綿を使用したのは実際2か月程度と思われる」など と主張しました。また、裁判長からの 度々の質問に対して興奮して反論する場面もあり、 感情的にならぬよう諫める場面もありました。
《カルテ提出求めてあら探し?》
 さらに、求釈明で、原告の診療記録(カルテ)等の提出 を求めていることについて、原告側から「何のために記録を 求めるのか?主治医は診断書並びに提出した写真等で足りる と言っている」としましたが、これに対し 「診療記録にて石綿が原因ではないことを確認するため」と主張、 裁判長も、「出せるものであれば検討してもらいたい」と発言、 主治医とも相談し検討することとなりました。
《次回期日は6月8日10時から》
 裁判長から、準備書面への反論と求釈明への対応を求められ、 準備に相応の時間がかかることから次回は、 6月8日(火)10時から415号法廷での期日が決定しました。
第7号旧国鉄・JR大井工場アスベスト裁判ニュースより一部転載

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’21.1.旧国鉄・JRは公正な補償を! <訃報>

 原告のKNさんは、1月24日に逝去されました。ご冥福をお祈りいたします。
  闘病の苦しみのなかで、裁判報告(1/22)を聞いたKNさんは「生き抜いて次回裁判に臨む」と決意されました。 KNさんの遺志を継ぎ、支援を強化し、闘い抜くことを、ここに記しておきます。

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’21.1.旧国鉄・JRは公正な補償を!進行協議行う

 《次回弁論は3月31日に期日変更》
 1月22日11時、東京地裁でアスベスト裁判の進行協議が行われました。 当日は、弁護団と支援者五人が事前に打ち合わせ後、代理人弁護士と四人が協議に同席しました。
 被告は、代理人2名に加え機構・会社の3名が同席、冒頭裁判長から、原告提出の準備書面(1)と 甲五・六号証について確認、 被告側の基本方針について質問がありました。これに対し被告は「肺がんはアスベストが原因とは思えない。 機構に一度申請された際に審査で蹴とばしている。原告はアスベスト業務には関与していたが業務が起因ではなく争う」と しました。
《労災認定を否定するのか!》
 裁判長が「労基署が国の基準に沿って認定したものでも争うのか」と質問すると、「労基署の判断に関心はない。むしろたばこが原因であり、最高裁におけるクボタの判例もある」と主張しました。 被告「肺がんの原因は喫煙だ」!?
《真実隠さず責任を認めて補償を》
 原告代理人から「今回提出した証拠の画像からプラークは確認できる」と指摘しました。 被告側は「求釈明もあり、確認と反論準備に相当の時間を要するので次回の期日を延期してほしい」と要望しました。
 これを踏まえ、裁判長は次回の2月17日の口頭弁論を取り消し、3月31日(水)10時から 口頭弁論 を開くことを決定しました。
 次回の期日は3月に延期となりましたが、被告側の主張は、「肺がんになったのは喫煙が原因、 原告就労時はアスベスト対策は実施していたし、石綿が飛散する車両は減少していたので責任はない」とするものです。
 しかし、当時を知る多くの同僚の証言は、立ち込める粉塵や間近に存在した石綿部材について存在を記憶しており被告の 無責任な主張には同意できないと話しています。今回提出した原告準備書面でもその矛盾を突きつけています。 被告は、真実を糊塗することなく責任を認め解決に向けて真摯な対応をすべきです。
《裁判を支援する会発足する》
 昨年12月10日、「旧国鉄・JR大井工場アスベスト裁判を支援する会」(略称JRアスベスト裁判支援の会)が発足しました。 目的は、アスベストにより肺がんを発症し、損害賠償を求めた原告KNさんを支援し、裁判闘争の勝利、被告旧国鉄・JRの責任追及、 公正な補償を求めることとしています。主な活動は、裁判の傍聴や署名等の活動、集会・学習会等の開催、ニュース等による情報提供等、 その他、目的達成に必要な活動とします。
 会の事務所は、品川労協(品川区大崎2-7-5)気付で、会費は、年間個人会員500円、法人会員1口2000円です。
 会の役員体制は、会長に藤野節氏(国鉄・JR東京OB親睦会会長)、副会長に(国労東京地方本部に就任要請中)、 木村正氏(国労大井工場支部委員長)、佐藤盛雄氏(国労大井工場支部OB親睦会会長)、事務局長に小池敏哉氏(元国労本部中央執行委員)、 事務局次長に池田理恵氏(神奈川労災職業病センター)、幹事に浦郷親義(国労大井OB会事務長)安元宗弘(じん肺・アスベスト被害者救済基金事務局長)氏 が就任しました。
 国労各機関、組合員、支援者など幅広い会員拡大で裁判闘争を支え勝利を目指します。皆さんのご協力をお願いします。
《要請行動取り組む》
 1月22日、裁判の進行協議の終了後、国労本部、同東日本本部、東京地方本部に裁判支援並びに支援の会への賛同など 要請行動を行いました。行動には、会の小池事務局長と国労大井工場支部伊東副委員長など参加し、本部は佐藤書記長、 東日本本部は大沼委員長、東京地方本部も石井書記長が対応して頂きました。
 裁判闘争の経過、会の目的、今後の取り組みなど説明し、裁判を契機にJR及び旧国鉄の退職者に公正な補償を 求めるためにJR各社に制度の改善を求める取り組みをしてほしいと訴えました。 各機関とも検討を約束して頂きました。
第5号旧国鉄・JR大井工場アスベスト裁判ニュースより転載

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’20.9.旧国鉄・JRは公正な補償を!第1回口頭弁論始まる!

 9月30日10時より東京地裁415号法廷において「旧国鉄・JR大井工場工場アスベスト裁判」第1回口頭弁論が行われました。
 当日は、原告、弁護団、支援者など30名が開廷前に集合し、コロナ禍で傍聴制限の中で12名が傍聴しました。
 原告のKNさんが意見陳述を行い、自身の現職時代の石綿粉じんの中での作業、とりわけガス溶接による車体外板の切断作業の際に直接石綿を手で丸めて車体に張り付けたり、取り外していた事例を語り、退職後に肺がんと診断・宣告されたときの気持ち、治療・療養の中での苦しさ、悔しさ、そして新型コロナウィルス感染が全国で広がる中で、感染が死に直結することへの不安を涙ながら切々と述べました。
 また原告側代理人山岡弁護士が裁判の目的、装填、被告の旧国鉄・JRの一体性と安全対策を怠り労働者を危険にさらした両者の共同不法行為について意見陳述を行いました。
 なお、JR、鉄道運輸機構と代理人は、答弁書を提出し「原告の被告に対する請求を棄却し、訴訟費用は原告が負担する判決を求める」「請求の原因に対する認否は追って主張する」として、裁判には出廷しませんでした。
 閉廷後、法廷控室で行動参加者に報告を行い、国労本部、東日本本部、東京地本、神奈川地区本部、東京OB会の各代表から挨拶を受けました。大井工場支部木村委員長から支援のお礼が述べられ、KNさんからはお礼の言葉と家族を紹介し、裁判闘争の決意表明がありました。
《次回は11月10日》
  次回の後半は、11月10日(火)13時15分からと決まり、旧国鉄・JR側の主張が行われる予定です。裁判は、いよいよ本格化、具体的攻防が始まります。コロナ禍で傍聴人数は制限されますが、こちらの闘う体制を裁判所と相手は注視しています。勝利に向けてみなさんの引き続きのご支援をお願いするものです。
国労大井工場支部OB親睦会 幹事 小池敏哉

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’20.7.旧国鉄・JRは公正な補償を! 旧国鉄・JR大井工場アスベスト裁判提訴

 7月6日(月)午後、原告とご家族、神奈川総合法律事務所より福田・山岡弁護士、国労東日本本部、国労大井工場支部役員、支援者ら13名が東京地裁に集合し、打ち合わせ後訴状を提出しました。審理を担当するのは民事28部と決定しました。
《旧国鉄・JR大井工場アスベスト裁判とは》
 この裁判は、原告KNさん(80歳)が、旧国鉄・JR大井工場で電気・ガス溶接の仕事で43年働き、その際車両や材料で使用してきた石綿粉じんに曝露、定年後の2017年12月に肺がんを発症したため、国鉄の権利義務を承継する鉄道運輸機構とJR東日本を相手取り損害賠償を請求するものです。
《原告KNさんの業務内容》
 KNさんは、鉄道車両の修繕に溶接工として携わってきましたが、その主な業務は、製缶工、電気溶接工、ガス溶接工がチームとなり車両の外板腐食部分を剥がし、新しい鋼板に取り換えるというものです。また、一般修繕に加えて、車両の大規模な改造工事なども担っていました。さらに、1996年に金属加工場に異動後は、石綿材料の取り扱いを含む各種機器箱の修理などを行っていました。
《アスベストへの曝露》
 国鉄及びJR東日本の鉄道車両には、外板内側や床下等にアスベストを含有するアンダーシールという塗料が塗られていた他、アスベストが断熱材として詰められており、これらをはがすとアスベスト粉じんが発生しました。その上、溶接工だったKNさんは発生する火花から車両の配線などを保護するために、アスベストの板を折って養生したり、湿らせて粘土状にしたアスベストを張り付けて配線を保護、作業後は、これらのアスベストを除去したりしていました。
 これらにより、KNさんはアスベスト粉じんに曝露されていました。2017年12月21日、肺がんを発症し、2019年4月1日、品川労働基準監督署より労災認定を受けました。
 国鉄・JR東日本は、原告らにアスベストに曝露しないよう①粉じん測定や環境改善、②石綿粉じん発生及び飛散防止措置③粉じんマスクを使用させる措置④石綿の安全性に関する教育・指導⑤石綿の代替品を用いる措置が取られるべきでしたが、国鉄・JRはこれらをいずれも怠っていました。
 
【この裁判の意義】
  この裁判は、国鉄・JR東日本に勤務していた存命のOBが、アスベストによる損害発生を主張して、 旧国鉄及びJR東日本を提訴するもので、とりわけJR東日本に対して責任追及訴訟としては初めての訴訟となるものです。
 これまでJR東日本は、アスベスト労災について、国鉄・JR双方に勤務歴がある場合、国鉄の在籍期間が長いこと をもって全て鉄道運輸機構(旧国鉄)に対応を丸投げしてきました。これまで鉄道における石綿災害が生じており、現在も一部職場でアスベストが残存し、 また、今後もかつて国鉄・JRで勤務していた労働者の石綿関連疾患の発症が見込まれます。そのため、本件において、JR東日本への責任追及により、 同社に石綿被害の深刻さを再認識させ、JRによる広範な救済制度の創設をめざす一助としたいと考えています。
国労大井工場支部OB親睦会 幹事 小池敏哉

    

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’19.12.日立パワーソリューションズ(旧日立田浦)アスベスト訴訟

 日立パワーソリューションズ(旧日立田浦)で溶接工として働き アスベストに暴露、退職後アスベストにより胸膜中皮腫(肺を包む薄い胸膜にできるアスベスト特有の癌、悪性度が高い) を発症、労災となり療養中のKYさんが、10月25日、日立を相手とする損害賠償裁判を 横浜地方裁判所横須賀支部に提訴しました。
 2017年5月から始まったアスベストユニオンとの団体交渉では、日立は因果関係は一応認めたうえで 「日立の内規では死亡したときに1千万円の見舞金」しかない、現在「本社が制度の見直しを考えているようなので 待ってほしい」の繰り返しで全く進展せず、誠意がみられませんでした。
 日立製作所本体では、これまで80名を超える方がアスベストのため労災となり亡くなっています。 日立の車両部門笠戸工場で長年働き、退職後中皮腫のため亡くなられたNさんの場合も、団体交渉で日立は 「1千万円」というだけで全く不誠実な対応。今年10月9日、Nさんのご遺族は岐阜地裁に損害賠償裁判をおこしています。
《裁判の日程》
  第二回口頭弁論 2020年3月3日(火)午後1時半
  横浜地方裁判所 横須賀支部
※皆さまのご支援と裁判傍聴をよろしくお願いいたします。
(アスベストユニオン、横須賀じん肺被災者アスベスト被災者の会)

'19.6. 旧国鉄・JR石綿肺がん訴訟
故竹井豊さんの 肺がん労災不支給訴訟
 最高裁でも敗訴 不当判決!

 この訴訟は、国労の現役組合員であった故・竹井豊さんの肺がんが労災か否かで 争われたもので、遺族が原告となり国を相手に2016年2月24日に横浜地裁に提訴した 裁判です。国労神奈川地区本部、じん肺・アスベスト被災者救済基金等が全面的に支援 してきました。
 2018年1月30日に横浜地裁で原告敗訴、原告が東京高裁に控訴するも 2018年11月12日、再び原告敗訴、最高裁に上告するも敗訴の不当判決となりました。
1 提訴に至る経過と裁判の意義
 故竹井豊さんは旧国鉄・JRで、レジン制輪子(車輌ブレーキ)を削る作業と 川崎発電所(旧国鉄・JRの火力発電所)でボイラー運転手として働き、約12年間石綿 粉じんにばく露しました。
 竹井さんは2011年8月、JR東京総合病院を受診、検査の結果、肺がんと診断され、 その後闘病しましたが2012年12月14日、54歳で死亡しました。
 死後剖検し、石綿小体が乾燥肺1gあたり1065本出てきたので、 川崎南労働基準監督署へ労災申請するも、現行の認定基準(平成24年石綿肺がん認定基準)に より5000本に満たないので労災は不支給になりました。以前、石綿肺がんの労災認定基準 は10年の石綿ばく露+石綿小体(本数の規定はなし)となっていましたが、厚労省は石綿小体が 5000本に満たない場合は労災を不支給とする認定基準に改悪しました。竹井さんはこの 改悪された認定基準によって、業務外とされたのです。竹井さんの訴訟は、個別救済にとどまら ず、改悪された認定基準を改めさせることもめざして闘われました。
2 横浜地裁で敗訴判決
 竹井訴訟は、2016年2月24日、遺族が労災の不支給処分の取消を求めて提訴、第1回目 の口頭弁論が4月14日、その後8回の弁論が行われ、改悪された石綿肺がんの認定基準は 不適切であること、竹井さんの石綿ばく露は10年以上あり肺がんの発症リスクを2倍以上に 高める累積石綿ばく露があったこと、等を主張しました。そして、2017年10月26日に 結審、2018年1月30日に判決が出ました。
 判決はよもやの原告敗訴の不当判決。
 横浜地裁は、現在の認定基準を適切であるとし、そして、石綿ばく露作業に10年以上 従事しても肺がんの発症リスクは2倍以上にならないと、原告の主張を否定しました。現行の 認定基準は、石綿肺がんの患者を切捨てるものです。これを適切であるとした判決は、まさに 不当判決です。原告側は、東京高裁へ控訴の手続きをとりました。
3 控訴審へ
 一審では、古川弁護士が1人で裁判を担当しましたが、控訴審では2人の弁護士を加え、 弁護団3人体制で行いました。また、弁護団会議には横須賀中央診療所の名取医師等も加わり 意見交換しながら控訴理由書や準備書面を作成し、裁判所に提出しました。
 支援運動では、国労神奈川地区本部とじん肺基金で、控訴審をどのように闘うかを話し 合い、東京高裁に「控訴審で十分な審理をつくし公正な判決を下す」ことを要請することにし、 団体署名を1661筆集め裁判所に提出しました。
 第1回目の口頭弁論が2018年6月20日に、第2回目が9月26日に東京高裁で行われ 2回目で結審となり、判決日は11月21日となりました。
 原告側は、第1・2・3準備書面と名取医師意見書を提出しました。原告側の控訴審での 主張は、改悪された石綿肺がんの認定基準(平成24年認定基準)は国際的な基準であるヘルシン キ基準に反するものであること、そして、竹井さんの場合、ヘルシンキ基準でいうアスベストの 中等度のばく露に相当し、かつ10年以上のばく露があり、肺がん発症の相対リスク2倍以上と 認められるので、これを司法が採用し救済すべきである、としています。
4 控訴審でも敗訴 上告審へ
 控訴審での最大の争点は、「24年認定基準」が正当かどうかということで、判決は 「24年認定基準が従来の認定基準を不適切に変更したということはできない」とし、 これを正当としました。国際的な基準であるヘルシンキ基準については「国際的に受け入れら れているものであるとしても、我が国における実情と離れてそのまま採用することが必ずしも 相当であるということはできない」として原告側の主張を否定し、東京高裁は原告敗訴の判決 を下しました。
 石綿による肺がん患者は中皮腫患者の少なくとも2倍以上といわれています。10年前 の労災認定数は1年間で中皮腫も肺がんも約500件だったのが、その後も中皮腫は500件 台で推移しているのに、肺がんの認定数は減り続け最近は400件を下回っています。本来、厚 労省は肺癌の認定数を1000件以上になるように認定基準を緩和すべきなのに逆に厳しくし たのです。そして、不適切なことをしている行政を正すのが裁判所の役割なのに、それに追随 したのが横浜地裁、東京高裁で、まさに不当判決です。
 高裁判決終了後、報告集会が開催され、弁護団から判決についての報告がありました。 そして、古川弁護士は亡くなった竹井豊さんから「とことん闘ってほしい」と言われた、という 発言をされ、それを受けて集会の中で原告の竹井時子さんは「上告して闘いたい」と決意表明が ありました。
5 最高裁でも敗訴
 12月に原告は上告の手続きを行いました。そして、上告理由書が2019年2月5日 付けで最高裁に提出され、原判決(地裁判決)の不当性を述べ、24年認定基準は公正ではなく法 の下の平等をいう憲法第14条に違反すると主張しています。
 私たちは勝利判決を勝ち取るため、「竹井訴訟の処分を取り消すことを求める要請書」を 作成し、5月16日、最高裁への要請行動を行いました。要請団は原告の竹井さんをはじめとして 国労神奈川地区本部、じん肺基金等10数名、西門の近くの部屋に案内され、約30分間、担当書 記官が対応してくれました。
 6月6日、最高裁より、「本件上告を棄却する。」との判決が出されました。その理由は、 最高裁判所に上告することが許されるものは憲法違反等の場合に限られ、本件はこれに該当しない、 というものです。地裁、高裁判決の中身は問われることなく、いわば門前払いの判決です。残念な がら、これで敗訴が確定しましたが、私たちは石綿肺がんの認定基準の改正めざして、今後も運動 を続けていきたいと思います。
(じん肺基金事務局 安元)

’19.2. 建設アスベスト訴訟の現状
-神奈川 東京 京都 大阪 福岡 札幌-

 被害にあった建設労働者が、国と企業(建材メーカー)を相手に闘われている建設アスベスト 訴訟。神奈川1陣訴訟、神奈川2陣訴訟が2017年10月に相次いで勝利判決を勝ち取り、 また、そのほかに東京、大阪、京都、福岡、札幌でも建設アスベスト訴訟が闘われ、11の判決 が出されています。裁判の争点は、国の責任、企業の責任、ひとり親方の救済の3点です。
1 建設アスベスト神奈川1陣訴訟
 建設アスベスト神奈川1陣訴訟は、横浜地裁で2012年5月に原告全面敗訴、その 後、東京高裁で控訴審が闘われ、2017年10月27日に勝利判決(国と建材メーカーに勝 利)を勝ち取りました。
 判決は、「国に安衛法上の規制権限不行使があった」として国の責任を認め、また、 企業については、「加害者の行為(石綿疾患を発症する危険があること警告する等を怠った)が 発生した損害と因果関係があると認めた企業に損害賠償責任を負う」としました。この訴訟は、 現在、上告審となっています。
2 建設アスベスト神奈川2陣訴訟
  2014年5月15日に提訴された神奈川2陣訴訟は、2017年10月24日、横浜 地裁で原告が勝利判決(国と企業に勝利)を勝ち取りました。
  判決は、国の責任を認め、企業については、2社の加害責任が認められました。2陣 訴訟はその後控訴審となり、現在、東京高裁で争われています。
3 その他の地域の建設アスベスト訴訟
 2012年12月に、国に対する勝訴判決を勝ち取った建設アスベスト東京1陣訴訟は、 その後控訴審が東京高裁で争われ、2018年3月に勝利判決(国に勝利)を勝ち取り、さら にひとり親方を救済する判決となりました。
 2016年1月に相次いで地裁判決が出た大阪1陣訴訟と京都1陣訴訟。大阪1陣訴訟 は1月22日、大阪地裁で勝利判決(国に勝利)を勝ち取り、京都1陣訴訟でも1月29日、勝 利判決(国と企業責任)を得ました。
 京都1陣訴訟はその後控訴審となり、2018年8月、大阪高裁で国と企業に勝訴し、 さらに、ひとり親方を救済する判決を勝ち取りました。大阪1陣訴訟も控訴審となり大阪高裁 で2108年9月に国と企業に勝訴し、ひとり親方も救済されました。
 最初に判決が出て全面敗訴した神奈川1陣のほかは、すべて国に勝訴(10の判決)、建設 アスベスト訴訟では国に責任があることはゆるぎないものとなっています。企業の責任も京都1陣 で勝利してから、神奈川1陣高裁判決、神奈川2陣地裁判決、京都1陣高裁判決、大阪1陣高裁判決、 企業に対して5つの勝利判決、加えて東京1陣、京都1陣、大阪1陣の3つの高裁判決でひとり親方の 救済も勝ち取りました。
 現在、神奈川1陣の他、東京1陣、大阪1陣、京都1陣は、各訴訟の原告 団・弁護団が足並みそろえて、上告審を闘っています。
(じん肺基金事務局 安元)

'18.6.   住友造船所交渉 中皮腫のSさん

 Sさんは15歳の時から住友の造船所(旧浦賀ドッグ)一筋に45年働き、定年を迎えた。最初は溶接工として、その後はガスで熱して水で冷やし厚い鉄板をまげるという仕事に従事した。退職後20年近くたち、かかりつけの医師から「肺に水がたまっている」と言われ精密検査を受けた。その結果は思いもよらぬ「悪性胸膜中皮腫」の診断。肺を包む薄い膜にできるガンの一種。アスベストによる典型的な疾患だ。そういえば思いあたることがある。溶接の火花や溶けた鉄を防ぐ火よけのアスベストの布は当時必需品。船の中では混在作業のため、防火対策や建材として使われたアスベストの切断による粉じんはあたり前だった。会社からは何の安全対策もなく、一度も危険と言われなかったという。
 労災として認められたSさんは、アスベスト被害に取り組む労働組合アスベストユニオンに加入、住友と交渉を始めた。住友には、退職後発生したアスベスト被害についての補償制度があるが、10年以上も前のもの。「中皮腫を発生させたことの謝罪と、今の制度を変え納得のいく補償」を求め交渉は続いた。
 2018年6月、結局制度は変えられなかったが、住友からの一定の水準による補償と、Sさんの自宅に会社の責任者が訪れて解決する、ということで決着した。
    045-575-1948 まで
(アスベストユニオン 早川)

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